目が合っても伝わるとは限らない


「今からお前たちはこいつらと戦ってもらう」

『「…は?」』


ちょうど昼過ぎ頃、土方さんがそんなことを言い出した。あたしと小太郎は思わず聞き返す。
こいつらと指したのは総司を始めとする幹部の皆。
イヤコレ無理だから。総司とかメッチャこっち見てるんだけど。一君も心なしか目が輝いている気がする。
あたしたちは後ろを向いて屈んだ。


『…ちょっとどうするよコレ』

「うむ、ここは大人しく従うべきじゃないのか?」

『ヅラ君ヅラ君、総司が笑顔でこっち見てくるんだけど!今にも斬りかかってきそうなんだけど!!ここは逃げるべきだと思います!!』

「ヅラ君じゃない桂だ。だが武士として逃げるのはいかんぞ、貴様それでも男か!!」

『あたしは女だァァァアア!!』

「お前らいつまでそうしてんだ」


土方さんの声に振り返ると、皆がこっちを見ていた。
それぞれ竹刀を手にしているのを見て、あたしは顔を引きつらせた。


『……何故こうなった?』

「それはね、隊士たちがあげはちゃんたちの実力を知りたがっているからだよ」


近づいてきた総司があたしたちに事情を説明してくれた。
どうやら入隊したばかりのあたしたちが幹部と同じ扱いなのが気に入らないらしく、実力が知りたいとのことらしい。
まあ、強いかも分からない奴らが自分たちの尊敬する人と仲良くしてたら嫌だよね。

事情を知ってしまったらやらないわけにもいかず、結局あたしたちは竹刀を持って立っている。
ああ、総司が心底満足そうだ。


「誰の相手をするかだが…」

『ハイッ!総司と一君以外で!!できれば平助あたりがいいです!!…容赦なく殴れるからな』

「お前さらりと何言ってんのォォォ!?」

「…あげはの提案は却下な」


あたしが勢いよく手を上げて言ったのに、土方さんに却下された。
なんだよケチ。

結局あたしは総司とやらされることになり、小太郎は永倉さんとやることになった。
コレあたし死んじゃうんじゃない?ヤダよこんなとこで死ぬのォォォ!!
あたしはおもわず左之さんに泣きつく。


『うわぁぁぁん!左之さぁぁぁん!!』

「大丈夫だ、なんかあったら助けてやるから」


そう言って頭を撫でてくれた。
…なんかイケメンにやられると照れる。左之さんは特にだ。銀魂世界にはいないような男だからかな。

しばらく左之さんに慰めてもらっていたら急に襟首を掴まれた。
思わず、ぐえっ、と変な声が出る。
振り返ると相変わらず笑顔の総司がいた。


 



×