たまには本気を出しましょう


女のくせに、ねえ?

そんなことを言われたのは久しぶりだ。

だからだろうかその言葉はあたしのある記憶を呼び起こした。

それは暗い暗い曇天の下、一人の天人が言った言葉。

「所詮は人間、その上女ときた。どうせてめぇにゃ何も守れやしねーよ。」

『……黙れ。』

それは笑う浪士たちに言ったのか記憶の中の天人に言ったのかは自分でも分からない。

だけど昔のような低い声が出たと思う。

『女だと思ってると痛い目みるぞ。』

そう言ったあたしはさっき倒した奴の刀を持ち、浪士たちに向かって行った。

−−−−…

「千鶴ちゃん!あげはちゃん!」

あたしが浪士たちを倒したころ、総司たちが走って来た。

『おー総司。無事だっ…たぁ!?』

走って来た総司はそのままあたしの肩をつかむ。

「怪我は!?」

『ないっ!!ないから離してくれェェェ!!』

総司が力いっぱい掴むもんだから、あたしの肩は変な音を立てている。

「あ、ごめん。」

そう言えば、総司は素直に離してくれた。

彼は無意識だったらしい。恐ろしい子…。

「よかった…お前ら無事だったんだな!!」

左之さんが安心したように言った。

左之さんはあたしたちを心配してくれていたらしい。優しいなぁ…千鶴はともかくあたしは会ったばかりだっていうのに。

「あげは、これはお前がやったのか?」

平助が倒れている浪士たちを指して言った。

『そうだけど…。安心してよ、みね打ちだから。とか言ってみたいわー。』

そう言えば、どっちだよ!!とツッコまれた。

大丈夫、ちゃんとみね打ちだから。
 

 



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