たまには本気を出しましょう


−−千鶴side−−

「やめてくださいっ!!」

夜、寝ていた私は物音で起きた。

不思議に思って襖を開けると、そこには何人もの刀を持った人がいて。

慌てて襖を閉めようとするが、その前に止められてしまった。

「おいおい、何も斬るわけじゃないんだ。ただ人質になってくれればいいんだよ。」

浪士たちはそう言いながら近づいて来る。

ここで私が捕まったら、皆さんに迷惑がかかってしまう…。

どうしたら…。

『てめぇらァァァァ!!かわいいかわいい千鶴に何してくれとんじゃァァァアア!!』

「ゴフゥ!!」

「…え?」

そんな声が聞こえ、私の前にいた人が飛んで行った。

『千鶴!怪我は!?』

そこに立っていたのは今日知り合ったあげはさんだった。

「っっあげはさん!!」

どうしようもなく不安だった私はおもわずあげはさんに抱きついた。

『うおっ!?……もう大丈夫だから。』

抱きついた私に驚きつつもあげはさんは頭をなでてくれた。

『さてと、あんたらこんなかわいい子に手ぇ出しやがって。…覚悟できてんだろーな。』

「ハッ女のくせにこの人数を一人で相手するというのか。なめられたものだな。」

浪士たちはあげはさんをバカにするように笑った。

確かに女性一人でこの人数はきついだろう。私も戦えたら…。

そんなことを考えてあげはさんの方を見る。だけど彼女は俯いていて表情は分からなかった。

『……黙れ。』

突如隣から発せられた声にその場がしんとする。

彼女はこんな声だっただろうか。

『女だと思ってると痛い目みるぞ。』

顔を上げたあげはさんの声は思いのほか低かった。


 



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