そうだ、京都へ行こう


晋助がこの世界に来て数日が経ったある日の晩。あたしたち銀魂組は晋助の部屋に集まっていた。


「なんで俺の部屋なんだよ」

『何でって言われても…ねえ?』

「ねえ?」

「うるせェよ。叩っ斬るぞ」


晋助が刀を持ち出してきたため、あたしたちは素直にだまった。
…え?晋助の部屋に来た理由?特にないよ。


「それで、話とはなんなのだあげは?」

「まあ、おおよそ見当は付いちゃいるが」


そう言ってあたしの方を見る二人。考えていることは多分同じ。
小太郎とあたしがこの世界に来たときからなんとなく予想はしていたが、晋助が来てその考えは確証に変わった。


『あたしたちがここに来る前に見たものは同じ。それはつまり…、』

「先生が関係していると?」

『そう。それか、あたしたち個人が関係しているか』

「…俺達が攘夷戦争以前から関わりがあることを知っている奴なんざそうそういねェだろうよ」


晋助の言葉は最もだ。しかしそれ以外考えられない。それならいったい誰がこんなことを…。


『…案外先生がこの世界にあたしたちを連れてきたんだったりして。なんちゃってー………』

『「「…………」」』


部屋に沈黙が流れる。


「そ、それはないだろう!いくらあの人が悪戯好きな人だったとはいえ!!」

「あ、ああ。それはねェよ、それは…」

『そ、そうだよね!さすがにそれはないよね、ウン!!』


あたしたち三人そうは言ったものの、内心焦っている。
先生ならやりかねない!!と…。
いやでも、さすがに先生はすでに亡くなってるんだし。あたしの考え過ぎだな。…きっとそうだ。


「…それで、貴様の考えはこうだろう?俺たちが来てしまったのだからあいつも来ているかもしれない、と」

『そう、それが言いたかったんだよあたしは!小太郎はたまたま新選組に、ってかあたしの上に現れたけど、あたしと晋助は別のところに来たわけだし』

「銀時もどこか別のところにってわけか」

『うん。だからさ、捜しに行きたいんだあいつを』


もしかしたら今もこの世界にいて、路頭に迷っているかもしれない。何よりきっと、あたしが会いたいんだ。銀時に。


「抜け出すか?」

「いや、ここは素直に許可をもらって行くべきだろう」

『そうと決まったら即行動!!明日の朝土方さんとこ行こう!!てなわけで今日は解散ー』


あたしの合図であたしと小太郎は晋助の部屋から出ていった。


***


翌朝

ダダダダダダダッ
スパーン


『おはようございます土方さ…ゴフッ!!』


開口一番土方さんに文鎮を投げられた。顔面直撃。女にするような行動じゃないよねコレ。


「朝からやかましいんだよテメェは!!」

『あんただってうるさいっての…』

「なんか言ったか」

『土方さん落ち着いて!!朝から文鎮もう一発はきついからァァァ!!』


真顔で二本目の文鎮を振り上げる土方さんに思わず後ずさる。そしたら誰かにぶつかってしまった。


『おお、すまんね。って総司か。おはよー』

「おはよう、あげはちゃん。朝からどうしたの?」

『……ああ、そうそう。土方さんにね、頼みがあって来たのだよ』

「お前何しに来たのか忘れてただろ」


当初の目的を忘れかけていたあたしは土方さんの方に向き直る。何故か総司が隣に座った。
まあ、それは気にしないことにして。


『土方さん。あたしたちに外出の許可をください』

「外出の許可だァ?なんでまた」

「そうだよ。土方さんなんかにもらう必要ないよ」

「テメェは黙ってろ総司」


総司を一睨みして腕を組む土方さん。その姿もまた様になってる。思わず見とれそうだ。


「…あたしたちってことは桂と高杉もか?」

『?そうだけど…』


そう言ったら渋い顔をされた。
何故…?


「わかった。許可する。」

『ほんと…「ただし!」……ただし?』

「お前ら三人だけで行くなよ!?」

『はい?』


あたしが許可を思っていたよりすんなりともらえたことに喜ぼうとしたら、土方さんに遮られた。
遮った土方さんはどこか焦っている。


『何なんですか』

「高杉が来てからというもの、毎日のように屯所に被害が出ているんだが?」

『あ、あー…』


そう、晋助が来てから毎日のように屯所がどこかしら壊されている。原因はもちろんあたしたちだ。といっても主に晋助と小太郎の喧嘩が多いのだけど。
つまり、土方さんが言いたいのはあたしたちだけで行くと町の方にも被害が出ると言いたいのだろう。


「それなら僕がついてくよ」

「お前は却下」

「えー」


土方さんが総司だともっと悪化しそうだからと、付添人は左之さんと永倉さんに決定した。


 



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