「いいか。むやみに蟲には触るなよ」
いや、蟲だけではなくそこらへんに生えてるようなものもだが、と付け足した。
『……わかった』
「……」
本当か。
こくりと頷く雛を信じることができず、口には出さなかったが心の中で呟いた。
「(ま、自分から行動しない分、大丈夫だろうとは思うが…)」
『……』
蟲が雛にひらひらと寄ってくる。
それに蟲煙草の煙を浴びせると、煙が絡みついた。
『……』
「ほれ、行くぞ」
じっと見つめる雛の腕を引っ張った。
「お前も蟲が寄ってくるみたいだな…」
お前も吸ってみるか、とニヤリと笑いながら言えば、
『…朔が…体に悪いって言ってた』
「…そうか」
ああしたい、こうしたいという思考のない雛はどう返してくるかと思えば…。朔にもう教えられていたのか。
「(あいつ…どこまで教えたんだ…)」
末恐ろしい奴だ。