ジムノペディ第一番1



部室にはジムノペディ第一番と布の擦れる音だけが響いている。
「眠れないんですか、先輩」
「眠れないんじゃなくて寝ていないのよ」
「仮眠の為にわざわざこの部屋空けたのにですか?」
「うるさいわねえ」
先輩はまた薄いタオルケットに体を包み込んで、部室のソファで寝返りを何度も打つ。それは眠れないときに寝心地のいい体勢を探すときのものだった。僕は本を読みながら見張りをしていた。

昼下がりの日の差す教室は昼食の後ということもあって眠たくなるもので、僕は本と向き合いながらうとうとしていた。
「ジムノペディって何番まであるの?」
「先輩まだ眠っていなかったんですか?」
僕はついつい欠伸交じりに答えた。
「見張りの君が寝てどうするのだね。ところで君はクラシックとか詳しくないの?私はこう見えてもクラシックはまったくと言っていいほどなんだけどさ」
先輩はどこか自慢げに話した。確かに先輩はスカートや髪の長さ、おしとやかな仕草から、ピアノを習っているご令嬢のようにも見える。しかしまだ付き合いが半年くらいの僕でも、それは見せかけなのだとわかる。
「先輩は豪快な人ですからね。」
「何それ褒めているの?で、君は?」
「僕はそうですね、詳しくはないですけど」
「けど?」
やけに食いついてくる先輩が気になりながらも僕は答える。
「ジムノペディが何番まであるのか知っていますよ」
「へえ、そりゃまた何で」
「はは、たまたまですよ」
これが本当にたまたまで、昨日たまたまついていたテレビ番組でサティのジムノペディが取り上げられていたのだ。
「先輩が寝たら教えてあげます」
「ずるいな、君は」


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