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「てめぇは……」
部屋の中央、金を湛えたその姿。
思わず声のトーンが下がる。
この七年ともに過ごしてきた獣、否、神と呼ばれるそれは、可笑しそうに喉で笑った。
「儂をてめぇ呼ばわりするのはおまえくらいのものだろうな」
「人の体好き勝手しやがって。偉そうなこと言ってんじゃねぇよ」
ヴィムは思い切り神を睨んだ。
なぜ突然。
どうして今。
いつも通り元気な体なら殴りかかっているものを。
自分の人生を奪った張本人が現れたというのに、文句を言うことしかできないなんて。
「生意気な奴だ。ミレイユの居場所を知りたくないのか」
気を害した風でもなく、神は機嫌良さそうに尻尾を振った。
探し人の名前が出てきて、はっとヴィムの怒気が下がる。
「ミレイユは……?無事なのか?どこにいるのか知ってんのか?」
ヴィムは駆け寄って、掴みかかる勢いで問い質す。
神はひらりと身軽にそれを交わし、ヴィムの周囲をゆっくりと一周した。
「落ち着け。ミレイユは無事だ」
低く深い声に、ほっとして肩の力が抜ける。
しかしすぐに我に返って、ヴィムは再び怒りを露わにした。
「ミレイユをどこかにやったのはてめぇか」
「挙句の果てには儂のせいか。儂がミレイユをどこかへやって、何の得があるというんだ」
神は呆れたようにヴィムの怒気を受け流す。
我ながら厄介な男を選んだものだ、と目の前の不遜な人間に目を細めた。
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