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尋ねた問いには、返答がなかった。
黙ってしまったミレイユに、ヴィムは焦って言い添える。
「いや、何もないならいいけど。体調が悪いのかなと思って」
「ううん、なんともないよ」
「そう。それならいいんだけど」
ミレイユには強く出れない。
相手が他の人間なら容赦なく問い質すこともできただろうが、下手に言いたくないことを言わせて彼女を傷つけることをしたくない。
「……ごめんね」
少しの間の後、ミレイユがぽつりと呟いた。
謝らせてしまった、とヴィムは慌てるが、開いた口から言葉が出てこない。
「なんていうか……寂しくなって」
かける言葉を探し出す前に、ミレイユのほうが先を続けた。
ヴィムは驚いて目を見張る。
「ひとりが嫌になって。ヴィムなら一緒にいてくれるかなって」
困り果てたような声が静かに闇の中に沈む。
それに返事をするより前に、ヴィムの手はシーツの中でミレイユの手を掴んでいた。
「いるよ、側に」
当然だ。
今までそうしてきたように。
どんな姿の俺でも、彼女が望んでくれるならば。
「一緒にいるよ。寂しくないよ」
そう言って、ぎゅっと手を握り締める。
獣姿では叶わなかったこと。
彼女がひとりになるたび、俺に縋るように腕を回して来るたび、ずっとこうして手を握ってあげたかった。
「……ありがとう」
ミレイユの声が震えている。
ヴィムはもう片方の手で彼女の体を引き寄せ、ミレイユが眠りにつくまで彼女の髪を撫でていた。
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