「本当に家を出る気か?」

紅茶を一口飲んで、レイモンはこれまで何度も口にした質問を繰り返した。

「もう準備も済んでいます」

「おまえが出ていく必要なんてない。ここはおまえの家だろう?ミレイユ」

まっすぐな目で同意を求められて、ミレイユは視線を落とす。

レイモンは過保護だ。
ミレイユをとても可愛がってくれている。
彼女が家を出るのをとても心配していて、しかもそれが自分が原因だというのを気にして、引き留めようとしてくれている。

「ここはお兄様とアデリア様の家になるのです。私は神殿に置いていただきます。お兄様が手配してくれたではないですか」

「それはおまえがどうしても出ていくというから……、見知らぬところに送り出すわけにはいかない」

「心配しなくても大丈夫です。お兄様にはもう十分、一生かけても返せないほどの恩をいただきました」

「恩などと言うな。おまえは俺の妹だ。何も返す必要などない」

レイモンは腕を組んで、憮然とした顔をする。
ミレイユは困った顔で微笑んで、カップを持ち上げる。

レイモンは、昔からミレイユの遠慮が気に入らないのだ。
自分は家族だと思っている。
だけど、ミレイユにとってはいつまでたっても、引き取ってくれた「主人」でしかないのだ。

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