「ミレイユに話しかけんなババァ」

「あんたと三つしか変わらないわよ!」

アデリアがこの家を住むようになって、顔を合わせば喧嘩ばかりしている。
食事の手を止めて、レイモンは顔を顰めて腕を組んだ。

「ヴィム、うちの大事な奥さんにつっかからないでくれるかな」

「大事なら離れにでも隔離しとけ。人前に出すな」

「あなたこそ、そんなに大事なご主人様なら隠しておいたら?」

さらりとアデリアに返されて、かちんときたヴィムは臨戦態勢になって一歩前を踏み出す。
その後ろで、ミレイユはおろおろと助けを求めてレイモンを見た。
レイモンは呆れたふうにアデリアを抱き寄せて、ヴィムと引き離す。

「アデリア、年上なんだから大人の対応をしてやってくれ。ヴィム、おまえがそんな態度を取ってるとミレイユが困るじゃないか」

怒られたアデリアはつんとそっぽを向き、ヴィムは口を尖らせてミレイユにくっつく。
両者痛み分けがいつものパターンだ。

万事ヴィムとアデリアはこのようにぶつかっているわけだが、朝夕、食事は皆で取っている。
レイモンの方針だ。
世話焼き気質がそうさせているのだろうが、恐らくヴィムとミレイユの見張りの意味もあるのだろう。

オベール家は神事を司る家だが、実質仕えているのは神ではなく王家だ。
直接口にすることはないが、ヴィムを神殿に戻せと王家から命じられているはず。

ヴィムはちらりと妻と談笑しているレイモンの様子を窺う。
レイモンには恩がある。
しかし、また困らせることになるだろうなと彼には珍しく自嘲気味に心の中で謝罪した。

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