ミレイユの送別会ということで、ドアの向こうから賑やかな声が聞こえてくる。
ヴィムは家主の部屋の長椅子に伏せて、呼吸で体を上下させている。

夕方アデリアと会った後、身体の異変を感じて、ミレイユが目を離した隙にこちらに転がり込んだ。
アデリアに会って、感情を高ぶらせたのが悪かったかもしれない。

あの女が嫌いだ。
良い人だとか悪い人だとか関係ない。
あの女に会った後は、ミレイユが泣きそうな顔をするから。

当のミレイユに仲良くしろと言われても、ヴィムにそんな気はなかった。
レイモンとアデリアが結婚しても、彼女を主人と見なせるわけがない。
ミレイユと一緒にいられないのなら尚更、一緒に生活する気もない。

「ヴィム」

声が止んで、窓の外の月がずいぶん高くなった頃、部屋のドアが開いた。
名を呼ばれて、うとうとと閉じていた目をゆっくりと開く。

「ここにいたのか。ミレイユが探していたぞ」

レイモンが隣に座って、ヴィムの頭に手をのせる。
噛みついてやりたくなるが、そんな気力もない。
第一、そんなことしたらミレイユに怒られてしまう。

彼女のもとへ帰らなければ。
そう思うが体が動かない。

「……今日は会えそうもないな。もう明日出て行くっていうのに」

レイモンの大きな手が体を撫でる。
撫でる手つきは雑で、荒い。
それでもこの手が好きなのは、ミレイユ以上だと思う。
彼女にとっても恩人だろうが、レイモンに助けられたのはヴィムも同じだ。

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