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結局、引越し先は当初通り、新築していたレイモンの隣の屋敷となった。
一度様子を見に来た王子も、帰り際に気が向いたら神殿においで、と笑ったくらいで特に反対もしなかった。
「で、なんでてめーらはここにいるんだよ」
「おまえたち二人がいなくなって寂しいんだよ」
年甲斐もなく、レイモンが口を尖らせる。
アデリアは涼しい顔でその隣に寄り添っていた。
「飯のたびに来られちゃ迷惑なんだよ。引越した意味ないじゃねーか」
「そう?ミレイユ。俺たち迷惑?」
「まさか、そんなことは」
「……くそ!」
ミレイユがレイモンの来訪を喜ばないはずもなく、ヴィムはレイモンを睨んで舌打ちした。
いつもと変わらない風景。
変わらない関係。
アデリアが嫁いできて、ヴィムが人の姿でいることが定着して、周囲が賑やかになった。
この頃ミレイユはそれが楽しくて、そういうふうに思える自分が嬉しかった。
それもこれも、ヴィムが側にいてくれるおかげだ。
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