掃除と兵長の優しさ



これは私がまだこちらの世界に来て日が浅い頃のお話。


ある昼下がり、私は箒を持ってただ立ち尽くしていた。
「おい、オルオ。ここがまだ汚れている。これで掃除したって言うんじゃないよな?」
リヴァイさんがはたきで汚れた場所を指して言う。
「す、すみません、兵長…」
オルオさんが謝るとすぐにそこの場所の掃除を再開する。

リヴァイさんは本当に掃除に厳しい。
私は掃除は苦手だ。
ただただリヴァイさんの姿に圧倒されるだけで私はその場から動けなかった。

「なまえ、何をしてやがる。お前は廊下終わったのか?」
リヴァイさんは私の姿に気がつくとこちらへと歩いてくる。
私は"はっ"として苦笑いをする。
「あっ、まだです!す、すみません!」
私は箒を持って急いで廊下の掃除を再開した。
「おい、この隅に埃がある。綺麗にしておけよ」
リヴァイさんはそう言えばまた自分が掃除していた場所へと戻って行った。

私はその姿を確認して"ふぅ"とため息をする。
すると後ろから肩を叩かれて私は振り返る。
ペトラさんが箒を持ったまま笑っていた。
「大丈夫?兵長は掃除には細かいからね」
「本当ですよー!こんなに細かいなんて思ってませんでした」
私は苦笑いをして言う。
「最初はみんな驚くみたいだよ。でも兵長のおかげで掃除得意になれちゃうよ?」
「でも掃除得意になってもあまり嬉しくないです」

「おい!ペトラ、なまえ。無駄話は後にしろ!」
リヴァイさんがこちらを見ていた。
「あっ、すみません!じゃなまえちゃん後でね!」
ペトラさんはリヴァイさんに謝ってから急いで持ち場へと戻って行った。
私もチラリとリヴァイさんの方を向いたけどもうリヴァイさんはいなかった。

私はまた掃除を再開する。
それにしてもとても疲れる。訓練する並みに疲れる気がした。
廊下の掃除ももう少しってところでまた肩を叩かれた。
振り返れば今度はハンジさんがいた。

「やっほ!リヴァイと一緒に掃除だって?お疲れ様!」
ハンジさんはにっこり笑って言った。
「あっ、はい。お疲れ様です!」
私はハンジさんの言葉に微笑んだ。
「でも廊下綺麗になったねー!これだけ綺麗だと気持ちいいよね!」
「そうですね!綺麗なのはとてもいいことだと思います」
私は頷いて言った。

確かに掃除する前よりすごく綺麗になったと思う。
これだけ綺麗ならリヴァイさんに文句は言われないと思う。
でもリヴァイさんのことだから隅にある埃のことを言われそうだけど。

「ねぇねぇ、もう終わるんだよね?」
「ここはもうすぐ終わりますよ」
私は廊下を見てからハンジさんへ視線を向ければ目が輝いているのが分かった。
私はそれ気が付いて苦笑いをして一歩後ろへ下がる。

「じゃ私の部屋で話そうよ!なまえちゃんのこといろいろ知りたいし、巨人のこともあまり知らないんでしょ?ちょうどいい資料が出来たから見て貰いたいから一緒に行こうよ!」
ハンジさんは私の腕を掴む。
「えっ、あのまだ終わってないので今はちょっと…」
私は焦ってハンジさんに言う。
「えーっ?大丈夫だよ!リヴァイには後で言っておくから!さ、行こう!」
ハンジさんは腕を引っ張って私を連れて行こうとする。
「ちょっ…ハンジさん!!」


「おい、クソメガネ!!てめぇはここで何をしてやがる?」
リヴァイさんの声に私は振り返る。
「おーっ!リヴァイ、ちょうどいいところに!掃除もう終わるんだよね?なまえちゃん借りていいかい?」
ハンジさんはまだ私の腕を離さない。

「てめぇは何を言ってやがる!これを見て分からないのか?掃除はまだ終わっていない!」
リヴァイさんの眉間の眉が濃くなる。
「えーっ?いいじゃん!1人減るくらい大丈夫だよ!じゃ行こうか!」
ハンジさんは私をまた引っ張り歩き出す。

「おい、ハンジ!いい加減にしろ!」
リヴァイさんはため息混じりで言った。
"クソメガネ"じゃなく"ハンジ"と呼んだことに私は少し驚いた。

ハンジさんは立ち止まってリヴァイさんを見る。
「まだなまえにはやって貰う所がある。お前の話はクソ長ぇからな。なまえ、こっちだ」
リヴァイさんがそう言えばハンジさんが掴んでいない方の腕を掴んだ。
「なんだよー!1人減るくらいさー」
ハンジさんはその場で文句を言いながら腕を離してくれて私はそのままリヴァイさんに引っ張られるようにその場を離れた。


「あの…リヴァイさん、ありがとうございました」
私は引っ張られながらお礼を言う。
「あいつが話し始めれば明日の朝になる。…なまえはここの掃除をしろ!」
リヴァイさんに連れてこられたのはリヴァイさんの部屋だった。

「……えっ?ここってリヴァイさんの部屋じゃないですか!こ、ここは掃除出来ないです!リヴァイさんが自分でやって下さいよ!」
さすがにリヴァイさんの部屋掃除はしたくない。何を文句言われるか分からない。
「ほぉ…俺と一緒の掃除は嫌なのか?」
リヴァイさんは真っ直ぐ私を見ている。
「……俺と一緒?…リヴァイさんと一緒にここの掃除をしろってことですか?」

「俺は今、そう言ったが?」
「……あっはい。やります…」
私は持っていた箒で掃き掃除を始めた。

チラリとリヴァイさんを見れば机の上にある書類を整頓していた。
リヴァイさんは常に周りを見ている。
私がハンジさんに声を掛けられた時もきっと助けてくれたのだろう。
リヴァイさんは優しい人なのだろうと思う。
こんな異世界から来た私を受け入れるくらいだ。

「おい、なんだ?用があるなら早く言え」
リヴァイさんが手を止めてこちらを見ている。
「あっ…すみません!何もないです!!」
私はリヴァイさんから視線を外して背を向けて掃き掃除を再開させた。

「…無理してないか?」
リヴァイさんが言った一言に驚いて私はリヴァイさんの方を振り返る。
リヴァイさんは真っ直ぐ私を見ていた。
「えっと…無理とは掃除のことですか?」
「……はぁ、違う。お前は常に笑顔でいるから無理してるのかと思ったんだよ」
リヴァイさんの言葉に私は微笑んで首を横に振る。

「いえ、全然無理してないです。たまに家族とか友達のことは気になりますけど、今すぐに戻れる訳じゃないですからね。今はここの生活を精一杯楽しくやってます!」
「そうか…。それならいい」
リヴァイさんは私から視線を外してまた書類の整理へと戻った。

リヴァイさんは私のことを心配してくれていた。
本当に常に周りを気にかけているんだなと思った。
私はリヴァイさんを見て微笑んで掃除を再開した。


「なまえ、もういいぞ。助かった」
黙々と掃除をして無事に終わった。
何とか怒られずに掃除を終わることが出来て安心した。

「リヴァイ!!掃除は終わったかい?」
部屋に入ってきたのはハンジさんだった。
「おい、クソメガネ!ノックしろと言ってるだろ」
リヴァイさんがハンジさんを睨んでいる。
「あーごめん、ごめん。つい忘れちゃったよ!なまえちゃん、終わったなら話ししようか!」
ハンジさんが目をキラキラさせている。
「えっと…」

「今日はこいつは俺が先約だ」
リヴァイさんが私の腕を引っ張り、隣へと引き寄せられる。
「リ、リヴァイさん…」
「えっ、そうなの?2人はそういう関係なの!?」
ハンジさんがまた目を輝かせる。

「ち、違いますよ!何も関係ないです!!」
私は首を振って否定をする。
「隠さなくてもいいよ!大丈夫、誰にも言わないから!」
ハンジさんは私の肩にポンッと手を置いて微笑んで、「じゃあ邪魔者は退散するから!」と言って出て行った。


「リヴァイさん!ハンジさんが勘違いしちゃったじゃないですか!」
私はリヴァイさんを見て言う。
「あん?…まぁいいんじゃないか?あいつの話を朝まで聞くよりはマシだろ?」
リヴァイさんはハンジさんが出て行ったドアを見て言う。
「まぁ…そうですけど…」

「……せっかくだから行くか。おいなまえ、準備しろ!」
「えっ?…どこ行くんですか?」
私は驚いた顔をしてリヴァイさんを見る。
「いいから準備してこい!」
「は、はい!」

私は急いで部屋に戻り、出掛ける準備をする。

それから私はリヴァイさんと街で夕飯を食べた。
本当に行くとは思わなかったから驚いたけどとても楽しかった。
リヴァイさんの意外な一面が見えた日だった。

その話はまた今度……。。



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