小説 | ナノ

▼ ズルズル
※シリアス




ズルリズルリ。

サスケを引き摺っていく。


おれはもう自分が立っているのも精一杯だったのに、その上歩いてサスケを担がなきゃいけないからもう何も考えられない位必死で、それでももうサスケを連れて行く事しか考えられなくなった機械みたいに、サスケを引き摺っていく。


担ぐサスケの腕は折れていて、変な風に曲がっているから二の腕を掴む。

もう片方の腕も折れているせいでダランとぶら下がってゆらゆら揺れていた。


折られてズルズル引きずられる両足は雨で弛んだ泥が溜まっていって、後ろにはずっと遠くまで小さく続く線路のような筋が見えた。
靴から出た指先が傷つくのが気になったけれど、それでも完全には担げないから仕方がないと引き摺っていく。

ぐったりして死んだように動かないのに、それでもそこにある温もりに安心する。
頬に当たる黒髪と、掴む腕の温度と、横を向けば間近にサスケの整った顔がある事に、サスケが側に居る事に安心する。


空が降らし足りないようにゴロゴロと鳴った。
足がガクガクして手が震えてきた。
サスケに付けられた肩の傷がズクリと痛む。

それでも連れて帰る為に戦ったんだから、ここでオレが倒れてしまっては意味がなくなる。



「・・ぁ・・」

耳元で小さなサスケの声がして、見るとサスケがうっすら瞳を開けていた。
薄く開かれた目の、睫毛の長さが妙に目に付いた。


「もうちょっと、だから」

意味のない言葉を吐く。
サスケの行きたい方向と逆に行って、無理やり連れ戻しているのに。


「・・・ウスラ・・」

目をこちらに向けてサスケは何かを言おうとした。

泥と傷の付いた白い顔で間近で睨まれると少しゾクリとしたけれど、なだめるように小さく笑ってそれでも足を前に踏み出す。


サスケは多分肋骨も折れている。
おれも多分折れているけど。
サスケは枯れた声で睨みながらまた何か言おうとしたけれど、腹に力が入らないからか声にならないようだった。
逃げたいのか罵りたいのか、サスケが何をしようとしているかは分からないが、機械のように足の速度は変わらない。

カカシ先生来てくれねぇかな。
帰ったら何しよう。
ぼんやりする頭で思っていると見覚えのある森が見え、木の葉の大門が遠くに見えた。
ああいつも出発!って言ってサスケと任務に行った、門だ。


「もう少し、だから」

意味のない事を言っているのは分かっていた。
それでも背中の体温は嬉しかった。
ずれてきたので腕を掴み直す。

「サスケ・・」

横にいるサスケを眺めた。
いつも側にいたサスケが側にいる。
何か違う気がしたけれどサスケだった。


ころす・・。


口がそうつむいだ気がしたけれど、きっとおれが悲観的になっているせいだ。
そう思った。


ズルリズルリ。


土を削り、草をかき分けて、もうすぐ目の前の大門に辿り着く。











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