山奥の可愛いひばり
雲雀(ひばり)
本道 仁友(もとみち じんゆう)
するっと自然に結婚話でてきます注意
◇
曇ったガラスがはめられたアルミサッシを開けても、外は同じように曇っていた。早朝の山の景色はいつも同じだ。霧、もしくは霞が木々にかかり、酷いときには庭先も見えないような白さ。今日の庭はどうか。開けてみると、澄んでいた。けれどその向こうの木々は見えない。
居間と、台所と、手洗いと、風呂場。それから寝室兼自室にしている部屋と、今は物置になっている部屋。築数十年の木造住宅で、二年ほど前の豪雪で潰れるのではないかと思ったけれどなんとか凌いだ。雪の後に晴天が続いたことがよかったのかと思ったが、山下に住んでいる大工に見てもらうと、豪雪地域にある古い建築と同じ造りになっているから大丈夫だ、と言っていた。けれど築年数が相当経っているので、建て替えか補修を考えたほうがいい、とも言われてしまった。愛着がある家なので建て替えは嫌だったが、補修は考えなければならない。
雲雀はここで、家族と暮らしていた。祖母と父と母と。けれど今、その誰も傍にいない。父と母は海外で農業を教える仕事に就いていて滅多に帰国してこず、海外で生まれた妹はそのまま、全寮制の学校へ通っている。家族がそろったのは、祖母の葬儀の日。それももう十年ほど前のことだ。
大学に進むか否か迷い、そうしなかった。学びたいこともなかったし、祖母が亡くなったばかりだったのでこの家から離れるのが嫌だったこともある。
生活はどうやってしているかというと、苔を毟って暮らしている。この裏の山にはたくさんの苔が生えていて、品質が非常にいい。祖母がやっていて、幼いころから遊び半分でやっていたことが今は仕事になったというだけだ。丁寧に、傷つけないように岩や地面から剥す。新聞紙を敷いた籠に移す。持ち帰って細心の注意を払って洗い、取りに来る業者に預ける。そうすると会社で職人がチェックして、指定の口座に金額が振り込まれるのだ。質がいいからか、金額はほぼ一定か上がるだけ。下がったことはほとんどない。そのお金で食べるものを買い、好きな本を買い、ほとんどは貯金している。
日がある程度高くなれば霧が晴れ、天気が良くなる。
洗濯物を干し、山に登って苔を取る。そうしていたら昼になり業者が来て、預けて、そうすればやるべきことはもう終わりだ。
「雲雀、生きてるかー」
ごろごろと畳に寝転がって本を読んでいたら、玄関が開くとともにそんな声がした。近所……と言っても歩いて三十分ほど下らないと会えないお隣さんだ。本道仁友。両親と一緒に農業をやっており、日に焼けた黒い肌がてかてかしているはつらつとした男前。頭もよかったので、こんなところにいないでどこかで就職するものだと思われていた長身男性だ。
実際、大学生になって家を出て町に住んでいたときには声を掛けてくれた会社もあったというが、結局は家を選んだ。
十歳年上の仁友が家を出て行くと聞いたときは相当悲しかった。祖母がいなくなってしまったときでもあり、雲雀はまだ九歳で、親も海外から帰ってこられなくて心細かったときだった。恨みさえしてしまいそうだったのだ。
卒業してなんでもない顔で帰ってきた仁友は、そっけない雲雀の態度にとても戸惑ったようだった。それが目に見えたが、素直な態度など取れなかった。仕方ない。
「生きてるよ」
「またお前はごろごろして。たまには畑でも手伝え」
「嫌だ」
あっさりとした口調で断る。すでに何回もしているやり取りだからか、わかりきっているという顔で、色の濃い玄関の上がり框へ座った。頭に巻いていた白い手拭いを外し、適当に髪をかき混ぜる。真っ黒い髪がぼさぼさと乱れる。それさえも格好いい。
雲雀は目を逸らし、本を読んでいるふりをする。
「雲雀、なあ、こっち見ろよ」
「何か用事?」
「いや、そういうわけじゃないけど。顔見たいじゃん」
祖母や両親もそうだが、農業をやっている人間は軒並み声が大きい。仁友も、やはり声が大きい。がさがさとした乱暴な声で、しきりにこちらを向けと言う。
雲雀が本を閉じて起き上がり、向き直ると、にんまりと笑った。目の端による皺だとか、伸ばされる太い腕だとか、厚い身体だとか。どうしてもどきどきしてしまう雲雀がくやしそうな顔をすると、なおさら笑みを深める。
膝立ちになって、進む。
抱きしめられ、肩へ顔を埋めた。
「シャツ着替えてきたから、臭くないだろ」
「うん。でも、なんかしっとりしてる……」
「引くなよ。こちとら朝から外で働いてんだ。汗もかくわ」
髪に触れる唇の感触に、胸を高鳴らせる。帰ってきた仁友に対して素直な態度が取れない雲雀に、好きだ好きだと押してきた。急に言われて戸惑ったけれど、ずっと好きだった相手に言われて嬉しくないはずもなく。もともといろいろなことを考えるのが嫌いな雲雀は頷いた。
「なあ雲雀、なんも食ってねぇんだけど」
「台所に大豆煮たのがあるけど。あと、にぼしのごま醤油煎りと米と、白みそのごぼうと豆腐の味噌汁と、トマトの塩漬けと、やまいものだしとき」
「食わせろ」
「勝手に食べれば」
「食う」
いそいそ、上がってきて台所へまっしぐら。面倒だからと言ってこちらに持ってこず、そのままそこで立ったまま食べるのだろう。がっしりとした肩幅や広い背中が見える。雲雀は膝を抱いて、ただその後姿を見ていた。昼ご飯を毎日食べにくる仁友のためにわざとたくさん作ってあるだなんて、言えない。
「うま」
むしゃむしゃと、食べる勢いはまるで掃除機。早朝から休まず働き、簡単な食事を挟んで午前中いっぱい動いているのだから相当減るのだろう。祖母も、歳の割にはよく食べた。朝昼晩と欠かさずにずっと。それから、昼を食べたら必ず昼寝。
仁友も、それは同じで。
「食った。ごちそうさん。寝るー」
食器をがちゃがちゃ洗い、滑り込むように雲雀の膝へ頭を乗せ、早々に目を閉じてぐうすか。寝つきの速さは異常なくらいだ。そっと髪を撫でてみると、コシが強くてしっかりしている。見つめられると何も言えなくなってしまいそうな強い焦げ茶色が瞼の下に閉じられているとほんの少し寂しく、早く起きてくれないかとすら思う。
寝付いてしばらくすると、激しく携帯電話が鳴った。雲雀は持っていないので、仁友のものだ。
「んあ、もう時間だ」
「もう」
雲雀が思わず言葉を拾う。すると仁友がにまにま、笑った。
「なんだよ、寂しいのか」
「別に」
はっとして、言う。しかし口から出てしまった言葉は戻せない。「そうか、寂しいか」と言いながら頭をぽんぽんとしてくる前で、真っ赤になって唇を尖らせてみせた。
「……夜、どうせ、来るんでしょ」
「そうだなー。雲雀ちゃんが寂しいってぴいぴい言うならなー」
「……別にいい」
「すねるなよ」
「すねてない」
「来る来る。来るから、いい子で待ってろ」
ぐしゃぐしゃ、頭を撫でまわされる。
「じゃ、またな」
頬にキスをして、せわしなく靴を履いて出て行く。庭に出るとばたばたと道を下っていく後姿が見えた。
仁友がいなくなってから、雲雀は何度も畑を手伝いに行ったことがある。本人は知らないと思うけれど、そこに行けば会えるような気がした。今でも、仁友が暮らしていた町は遠いと思う。幼い頃はそれこそ、世界が離れてしまったような気さえしていた。こんなことを言えば笑うだろう。でも、本当に悲しかったのだ。
今は手を伸ばせば触れられるようなところにいるし、寂しくなったら電話すれば会える。抱きしめて、傍にいてくれる。朝を一緒に迎えたこともある。でもどうしてだろう、どんどん寂しくなる。こうやって、出て行かないでほしいとも思う。
再び顔を出したその思いを断ち切るように、雲雀はふいと、家に戻った。
にやにやと畑に戻った仁友を、あきれたような顔で見る両親と笑っている近所の人。雲雀の家とは異なり、この辺りは複数軒まとまっていて、隣り合った畑で精を出している。
「山の上の雲雀ちゃんに会いに行くのがそんなに嬉しいかね」
「いやーもうねぇ、いいですよ雲雀は。かわいくって」
「そうかね」
ひひ、と笑う近所のおばさん。
仁友が昔から雲雀好きなことは有名で、誰でも知っている。「雲雀を嫁にする」と言って憚らなかったからだ。知らないのは雲雀本人のみで、彼の祖母さえも知っていたのである。
「根性無しに雲雀はやらないよ」
何度となく言われ、そのたびに畑や田んぼや林業に精を出し、勉強で成績を残し。本好きな雲雀と結婚するなら学があったほうがいいだろうし、将来畑がどうにかなっても潰しが利くかもしれないと大学進学を決めた。それも、それなりに有名な大学へ行ったほうがいいだろう。そんなことで進学先を決めた矢先、雲雀の祖母が床についてしまった。
見るからに落ち込む雲雀。
寝ている祖母を見舞いに行くとふたりきりになり、彼女は病だというのに相変わらずのぱっきりした声で、言った。
「仁友、あんた雲雀とよくなりたいのか」
「うん」
「雲雀が捨てるんならいいけど、雲雀捨てたら呪い殺すよ」
「わかってる」
「あの子にはあんたしかいなくなる。中途半端はよしてくれ」
「わかってるよ。大丈夫だよ」
そのとき、雲雀が心配そうに顔を覗かせた。
仁友の隣に座り、きゅっとその手を握る。それを見て祖母は安心したような顔をした。
翌朝、彼女は旅に出た。永い永い旅。わんわん泣く雲雀を抱いていたのは仁友だ。両親の傍によらない子どもは、仁友の腕を選んだ。
そのとき、雲雀には自分しかいない、と理解した。両親とは縁遠く、会話らしい会話もしない雲雀。
その次の年、受験を済ませて大学に進学する話をした仁友を傷ついたような悲しそうな目で見ていた。
帰ってきたら、今の通り。
つんつんと素っ気なく、好きだ愛してると言っても、真っ赤になってそっぽを向く。同じ言葉を返してくれたことは一度もない。
それでも、昼に家へ行けば明らかに用意された食事があり、抱きしめたりキスをしたり、させてくれる。膝枕でなく寝ていれば上掛けを掛けてくれ、目覚ましのアラームで起きなければそっと揺すって起こしてくれる。そしてあの、寂しそうな顔。
自惚れでもなんでもなく、雲雀は好きだと言っている。態度で、あの大きなくりくりの目で。
思い出してはでれでれする仁友を、横から父親が叩くのも無理はなかった。
仕事を終え、農具を手入れして風呂にも入らず仁友は家を出た。山道を駆け上がるーー気持ちで、歩いて行く。てっぺんあたりに煌めく雲雀の家のあかり。風呂の辺りに電気が見えて、夜道で仁友はにやにやする。雲雀のちっちゃな身体はどこもかしこも薄く、膝も枕にするには頼りない。でも頭を預けると安心し、遠慮がちな指がぎこちなく髪を梳いてくれるのもたまらない。寝ながらも感じる幸せ。
雲雀が風呂。
湯上がりの雲雀。
ドゥフフ、とすけべ丸出しな笑い方で、仕事に疲れた足を急がせた。
琺瑯の湯船へ湯が溜まるのを見つめ、いい頃合いで止めてから水を足す。自動などというものには縁遠く、足元も冬場は寒いタイル張り。つま先立ちでかけ湯をしてから風呂に浸かると実にありがたく感じる。祖母と交代で毎日掃除をしていた頃からひとりになった今まで、風呂はぴかぴかだ。
仁友、来るのかな。
湯気のせいではなく、ほわりと頬を染める。健康的な色合いの肌は艶があり、黒黒した髪も目も宝石のようにきらきらしている。雲雀本人は自分のことに酷く無頓着だが、可愛らしい容姿をしていた。苔を取りに来る業者の人間が毎回見惚れていることにも気付いていない。
風呂に入ろうかどうしようか迷い、脱衣場でしばらく考えて服を脱ぐ。仁友が来るにはまだあるだろうから、さっと入ってしまおうと考えた。
下着も脱いで、タオルを持って。
タイルに片足を乗せたとき。
戸が開いた。
仁友と目があった。
固まり、しばらくおいて真っ赤になった雲雀の、声にならない声が仁友には聞こえた気がした。
謝るのも妙だし目を逸らすのも。
一瞬で考えた仁友は、とりあえずまじまじと雲雀の身体を見つめた。肋が浮きそうな薄い身体、ほぼ直線で、けれど太ももは他より発達している。薄いけれど。足首などは折れそうだ。
次に顔に目を戻したとき、雲雀は気の毒なくらい赤くなっていた。腕などに比べて白い肩まで顔と同じ色になっている。
「ただいま」
間の抜けた仁友の言葉に、雲雀はとんでもない音を立てて風呂場へと逃げ込んだのだった。
「なあ、雲雀ちゃん怒ってんの」
見られたことで頭がいっぱいで、返事もできない。すりガラスの向こうに座っているらしい仁友のぼやけた輪郭が僅かに見える。
「怒んなよ。いいもん見せてもらったって」
「いいもん」
「いつかは見せてもらいたかったし、ちょっとフライングしただけだって」
「……あっそ……」
見せるにしても、用意がある。気持ちの用意。何も整っていない状態で見られてもただ恥ずかしいだけだ。
「雲雀、俺も入るからな」
「えっ、嫌だ」
「ベタベタして気持ち悪いもん」
「えっ、えっ」
「入るからなー」
ごそごそ動く人影。本当に脱いでいる。
慌てふためく雲雀、苦肉の策で、窓辺の入浴剤を入れた。祖母が毎回おいていた場所に今もある、白く濁る入浴剤。せめて身体が見えなければいいだろう。
洗い場へ背を向け、音だけを聞く。流れかけていたシャンプーやらボディソープやらの匂いが、再びむんと香った。
「……見えないのって、逆にえろいな」
不穏な呟きに肩が跳ねる。
湯量が増して、浴槽から溢れ出した。
間もなく太い腕に抱かれ、抵抗虚しく引き寄せられた雲雀。
「人と入るのもいいもんだな」
「落ち着かない」
「まあまあ」
「落ち着かない」
だばだばと暴れる雲雀をやすやす抱き込んでいる腕。恥ずかしかったのも初めだけで、次第に心地良いと思い始める。
ぴちゃん、とシャワーから溢れた雫が、タイルに溜まっていた水を打った。
「雲雀」
「なに」
「俺、ばあちゃんと約束したからさ」
「なにを」
「雲雀と、ずっと一緒にいるって」
「いつ」
「ばあちゃんが死ぬ前。だからってわけじゃねぇけど、これから先はずっと雲雀といたいと思ってるから。わかっておいてな」
肩を撫でる大きな手。
雲雀は、ただ頷いた。好きだとは気恥ずかしくて言えなくて、一緒にいてくれ、とも言い難い。本当は一緒にいたいのに。ずっと顔を見ていたいのに。
でも、仁友が言ってくれた。
嬉しさがゆっくりこみ上げる。
「ついては、俺この家に引っ越そうと思うんだ」
「……は?」
「雲雀が俺んち来る? それでもいいけど、うちうるせぇよ?」
「……嫌だ」
「じゃあ俺、こっち来てもいい?」
「なんで来るの」
「雲雀といたいから」
「……」
「あれ、嫌? 嫌ならまだ待つけど。通い婚でいいけど?」
「……嫌じゃ、ないけど」
通い婚って。言いたかった雲雀の口が無意味にぱくぱく動く。婚。婚を結んだ覚えはない。婚。
「よしよし、ようやく夫婦らしくなるな」
「ふっ」
「あ、籍がまだだった」
「ふ、」
「式やる?」
「しき」
「色々まだイベントあるなー俺たち」
のほほんとした仁友のつぶやき。
雲雀は頭がくらくらしてきた。一緒に暮らせるのは嬉しい。が、仁友の口から出てくる言葉はなにもかも急で。
そういえば大学に行くときもそうだった。矢継ぎ早に進学先の話をされ、じゃ、と言って去っていく。きちんとこちらの話を聞くのはいつもあと。
そのぐいぐい進む機動力が嫌いではないが、いちいちびっくりしてしまう。
「……仁友」
「ん?」
「頭が痛い」
「なんだ、かぜ?」
「仁友のせいで」
「あれ? なんで?」
「結婚するの?」
「あ、まだ早い? 俺全然待つし」
「それ、先に言って」
「悪い悪い。浮かれちゃって」
雲雀といられると思うと嬉しくて。
付け加えて、両腕で華奢な肩を抱く。
「雲雀、俺さあ、せっかちだからさ。早すぎたらその都度教えて。早いなぁ鬱陶しいなぁって嫌いになったりしないで」
「嫌いには」
「ならない?」
「なら、ない」
首が赤くなる。わかりやすくて可愛くて、思わずそこへ唇を触れさせると妙な声が聞こえた。ねこが尻尾を踏まれたような声。
「雲雀、俺雲雀が好きだわー」
「すき」
「うん。大好き。すげー好き可愛くて苦しい」
腕の中でかちかちになる可愛らしい雲雀に、仁友はにやにやが止まらない。
「ご、ご飯」
「ご飯?」
「おなかすいた、し」
「ああ、風呂上がって食う?」
「うん」
恥ずかしかったのだろう、下手なやり方で話題を反らした。
俺は一体あと何回、心を撃ち抜かれるのだろう。
気を遣って先に出て着替え用に常備されている服を着て、雲雀がほとんど用意してくれている食事を支度した。
どんな顔で出てくるかな。
考えていたら、また頬がだらしなく緩んだ。
出てきて目を合わせない様子ににまにま、布団に入って雲雀の背中を抱いて寝る。どちらも朝は早いので、ほぼ無言のまま寝入った。
翌朝は、深く深く霧がかかっていた。昼までに晴れなければ苔取りにはいけない。
布団から出てサッシを開けて、吹き込んできた寒さに驚いた雲雀は布団に戻る。潜り込むと、もういない仁友のぬくもりを感じた。
これが毎日当たり前になる。
考えるとぽっぽと熱くなる。仁友が毎日当たり前にいたらどれだけ幸せだろう。でも。すぐに雲雀の顔は暗くなった。ずっと、と言っていたが、もし仁友が雲雀を嫌いになったら。家を出ていってしまったら。今より、きっと、寂しい。素直にならないと嫌われてしまうんじゃないだろうか。
珍しくあれこれ考えていたら、頭が痛くなってきた。仁友と暮らすにはまだ早いんじゃないだろうか。わからない。うんうん唸っているうちに霧が晴れ、苔取りへ。
うんうん唸りながら出荷準備をし、うんうん唸りながら昼の用意をして。いつものようにやってきた仁友、不思議そうな顔。
「雲雀、眉間にすげぇしわ」
「仁友」
「うん?」
「……やっぱり、暮らすのやめよう」
目を見開き、驚き顔の仁友。
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