ほとがらふ




※武市√月終幕15話ネタバレあり






「じゃ、すぐそこがホトガラ屋っス」



先に近江屋に行くと言うみんなを見送ってあたしと半平太さんはホトガラ屋に入って行く。



「入ろうか」

「はい!」



中に入ると優しそうなお爺さんが案内してくれた。

あたしがいた時代のように明るくて華やかなセットはなくて、石で出来た床の上に茣蓙が敷いてあった。



「好きなように座って良いよ」



お爺さんの柔らかい笑顔とは対照的に、半平太さんの顔は堅かった。



「半平太さん?」

「…ああ」

「眉間に皺よってますよ」

「ふふ、お兄さん。魂を吸い取られると言う噂を信じとるのかね?」

「いっ、いえ…そう言う訳じゃ…」



半平太さんはあたしに指摘された眉間を抑えて、慌てて振り返り否定をした。



「大丈夫じゃ、今まで沢山の人を写したが、誰も死んじゃおらん」



にっこり笑うお爺さんの優しい顔につられ、あたしも半平太さんも笑顔になった。半平太さんに手を差し出され2人で茣蓙の上に座る。



「それじゃあ写すからね。2人で自然にしててね」



お爺さんそう言われると、半平太さんは手を伸ばし、あたしの頬をすり抜け髪の毛に指を通す。半平太さんと目が合うと、微笑まれあたしも笑顔になった。2人が一番自然体だった瞬間にこの時代のカメラは光った。



それから印刷に物凄く時間が掛かるとお爺さんが言うから、2人でお団子を食べに行って沢山話をした。すっかり夕方になり、ホトガラ屋さんに戻るとホトガラが2つ出来ていた。



「君たちはとても良い夫婦だね」

「夫婦…!?」

「もちろんです」

「半平太さん!?」

「…ふっ。行こう、杏絵」



お爺さんにお礼を言ってホトガラ屋さんを出て帰路につく。



「良いホトガラだな」

「はい!あたし一生の宝物にします!」



ホトガラを見ながら半平太さんの隣を歩く。嬉しくて顔が緩む。
ふいに半平太さんが杏絵、と呼ぶ。ホトガラから目を離し顔を上げると、あたしの唇に半平太さんの唇が重ねられた。半平太さんとの初めてのキス…吃驚したけどそれよりも嬉しかった。



「京に帰って来たらずっと言おうと思ってた事があるんだ」



唇を離した半平太さんが微笑んで頬を撫でたまま話す。半平太さんの後ろには大きな夕日があった。



「なんですか?」

「状況が落ち着いたら…、僕の妻になってほしい」

「え…っ」

「駄目、か?」

「だっ、駄目じゃないです!」

「そう」



半平太さんは心底喜んだ顔で良かった、と呟いた。

半平太さんはもう一度あたしに優しく口付けて手を差し出した。あたしは半平太さんの左手をしっかり握った。



「帰ろう、龍馬たちが待ってる」

「はい!」



ほとがらふ
(いつかそれを現実に)

2011.01.29
グズマニア(理想の夫婦)




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