夜中布団の中で目を瞑ると、じわりじわりと肩に広がる冷たく鈍い感覚。
夜が怖いだなんて、まるで子供みたいなことを思い出したのはいつからだろうか。
もう夏の大会が目の前に来ている。
俺はまだこの感覚の名前を知りたくない。
眠れない夜に本を読むのが日課になっている。 真っ暗な寮室、小さな明かり一つつけて、ベッドの中で眠りをまつ。
明日も練習がある。 身体は限界まで疲れている。 それなのに、意識は無意識に存在を主張する恐怖に引き寄せられて落ちてはくれない。
ペラりとめくる本の端で、自身の携帯がチカチカ光るのが見えた。
「明後日の予定了解です 楽しみにしています(ˊˋ*)」 時計を見れば時計の針は1時を指していた。 最後に俺が送ったメッセージは22時。 返事は明日だと思っていたから驚いた。
「すまない。起こしてしまったか?」
「キャンパスサイズとか買いたい絵の具とか調べてたので 全然大丈夫です(o´`o)」
「早く寝るんだぞ」
「はい!もう寝ます。 先輩も おやすみなさい」
おやすみなさい…か。 苗字がこれをどんな顔で送って来たかが想像出来てしまって俺まで笑顔になる。
当たり前の言葉が無性に暖かくて、 「おやすみ」 そう返事を送りながら、瞼が落ちて行くのを感じた。
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