君と見る世界の色 | ナノ







青道高校は正直頑張れば自宅から通える距離だ。
それでも自宅を出て寮に入ったのにはもちろん理由がある。


離れたかったんだ。

御幸一也から。

周りからみたら仲のいい幼なじみ。
けれど、私はずっと昔から一也が好きだった。

野球が大好きで、小さいころはよくキャッチボールの相手をさせられた。
中学に入るとシニアチームに入ったからキャッチボールの相手は流石にさせられなかったけど、一也の家では家事を一也がやることが多くて、大変だからとちょくちょくお手伝いをさせられた。

それは、うちの両親が一也のパパや一也を心配してのお節介だったり、一也から「買い物行くならついでに〇〇買ってきてくれね?」みたいなパシリみたいな連絡のせいだったり色々だったけど、その全部が楽しくて仕方がなかった。

一也のパパも私のことを本当の娘みたいに可愛がってくれているし、「ただいま!洗濯入れとくよー」なんてパパに声をかけると「あぁ頼む」なんて普通に一也の家にあがれるような関係だった。


ずっとその関係に疑問を抱いていなかったし、続けて行けると思っていたけど、中学にあがると一也はすごくモテ出して、女の子達からはただの幼なじみの癖にでしゃばり過ぎなんて言われることも増えた。

そんなつもりはなかったけれど、これから一也に彼女が出来たら、こんな関係続けていけないんだなってことは理解した。

その日はきっとすぐ近くまで来ている。
だって、一也はどんどん背も伸びてカッコよくなって、野球だって上手くて。
私は、そばにいたらきっとお節介をやめられないし、一也が彼女といるのを見るのが辛くて。

そんな時に青道高校美術部の先生が私の絵を見てくれて、「一緒に絵を描かないか?」って誘ってくれた。
青道高校の文化部寮には自主活動が出来る部屋が用意されていて、夜行性が多い文化部の子達が自由に絵を描いたり音楽を演奏したり出来るようになっていて、見学に言ってすぐに「ここで絵に集中しよう!」って決めた。

なのに、何故だか一也まで青道に来るって言い出して、一也が選んだ道に私が文句を付けることは出来なくて、なんでだかわからないけど、私達は同じ高校に行くことになってしまった。


これじゃ意味無いのに。


一也のこと、諦めたくて家を離れたのに。


でも、私は決めてるんだ。

今日で、一也とはさよならするって。


校門を1歩一緒に入って私は言った。
決意を込めて。


「私、こっちだから。じゃあね、“御幸”くん!」








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