「へらず口を叩く」



自分を正当化するのが実のところ怖いのでしょう、なのにどうしてそんな意味のない事をするの、と問われた。
彼女の言葉は時に私の脳に爪を立てる。痛くて仕方がないが、彼女の爪の間には私の脳の欠片が残ることだろう。

「正当化するのは言葉や事実があるからです。だから私は今のうちに自分を卑下しておくのです。しかしそれは罪でありましょうか、そんなに冷ややかな目で論じられる事でしょうか。私は私を守って可愛がってやってるだけなんですがねぇ…」

口から出て行くのはずっと我慢していた、程度の低い弁解でありまた私の本性で、常日頃見栄を張っているがために作られた幼児のような開き直りである。

「あなたは自分の良くないところを分かっている。それでいて焦点をずらすのは、なぜです」
「ずらしているだなんて。そんな事、どうしてお思いになるの」
「だってそうでしょう、あなた、本当のところは自分を卑下などしていないくせに。本当は誰よりも自尊心や自己評価が高いくせして。」
「もしそうだとしても、言わなければどうという事もないでしょう」
「私、あなたのそういうところが好きじゃないわ」
「どうせなら嫌いと言って頂戴」

捻くれた返事に黒い眉が顰められた。私はどうにもその表情が好きで、この人を困らせていたいのだと最近になり気付いたが、なんとなくそれを知らん振りしにやにやと笑って見せた。




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