「放浪者」


その頬の黒子に、何度唇を落としたいと思ったでしょうか
顎を何度なぞりたいと思ったでしょうか
恋なぞと言うには、低俗すぎる

触れたくない
砂みたいに崩れてしまいそうで恐ろしい
受け入れてほしくない
泣きたくなるのだ

妄想の中で何度もあなたと幸せになりました
互いに冷たい手を重ねました
ちょっと乾いた唇をくっつけました
腕を回して躰をぴったりと合わせました
それでもあなたとの世界は張りぼてのようで、鋏が現れたならば、すぐさま終わりに辿り着けるでしょう。(未熟すぎる愛だと、人は言うだろうか…)

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