◇◇◇
「今は、記憶が無くなっているが大丈夫だ。思い出させるから」
えっ、と思った瞬間。唇を貪られる。舌を絡められて、時々ちゅっと吸われて。舌使いに翻弄される。同時に、温かいどろっとした何かが体内に入り、鉄の味がした。
「っ....あ、ぁ、んむっ、ぁあああ!」
瞳孔が開いて息が苦しくなる。唇がいつの間にか、離れているのにも気付かずに胸を抑える。
あつい、あつい。
身が焼ける様で。でも、何故だかその熱さが大事な物に思えて。
此処は魔王城とか勇者達が見ていたとかどうでもよくて。胸の痛みと身体の熱さ、酷く煩い耳鳴りに薄れていく視界に抗う事をせずに、意識を飛ばした。
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