新造の遊女と坂田さん18歳の話。
郭言葉は適当です。
坂田→←夢主の両片思い。


最近、よく顔を見せる銀髪のお侍様。姉様が支度をしている間、姉様の禿である私が場を繋げるのだ。
お侍様はよく喋る。
共に戦場に立つ幼なじみのことを罵ったりはしているが、心の底から信頼しているのだと、話をしている時の表情で分かる。
お侍様は私が知らない外の世界のことを教えてくれる。何時しか、お侍様とお会いするのが楽しみになっていった。同時に、お侍様はどんな風に姉様を抱くのだろうかと考えるようになった。あの大きな手が姉様の身体を愛撫し、あの低い声が姉様に甘い言葉を告げるのか。そんなことを考えるだけで、私の胸に嫉妬の焔が燃え上がるのだ。

お侍様がこの郭にきて、数週間目の日のことだった。私に突出しの話が舞い込んできた。
とある老舗呉服屋のご主人が私を見初めたらしい。初めて客を取る遊女に対してかなりの額の揚げ代を用意してくれたらしく、姉様は喜んでくれたのだが、私は嫌だった。
顔も知らない、まして爺になんて抱かれたくない。お侍様に抱かれたい。

十六夜の月が昇る晩、お侍様はやってきて今日も姉様を指名する。そうして、私は姉様が来るまでお侍様にお酌をするのだ。お猪口を持つ節くれだった指、藍色の着物を無造作に着崩し、はだけた胸元。そこから覗く厚い胸板。行灯に照らされるお侍様の横顔は綺麗で、美しい。
美丈夫とはお侍さまのような人を言うのだろうか。
胸がきゅうと締め付けられた。
途端に、下腹部が熱を持つ。

「でな、辰馬のやつがよ……」

つ、とお侍様の唇に人差し指を当てる。

「お侍様。あちきは明日、一本立ちするでありんす。もうお侍様とこうして、お話することは……ありゃあせんのじゃろうか。……お侍様。お願いがありんす。あちきを、抱いてくりゃせんでっしゃろか。あちき……私……初めてはお侍様がええ。お侍様に抱かれたいんや。私はお侍様を好いとる。やから……」

言葉が続かなかった。お侍様の手が私の後頭部に回り、引き寄せられ荒々しく口付けられらた。
唇の隙間からお侍様の厚い舌が入り込んできて、歯列をなぞり、舌を絡めとられる。

「ふぅっ……ん、はぁ……」

薄暗い座敷に響く淫靡な水音。お侍様は私の咥内を犯しながら、ゆっくりと畳の上に押し倒した。反動で徳利が倒れ、酒が溢れる。
下帯を解かれ、忍び込む手は胸を、腹を撫で、それから下腹部へと辿り着く。お侍様の指が、舌が……熱を孕んだ箇所を優しく愛撫し、私は快楽の波に呑まれる。

「お侍様ぁ……」

私の唇から溢れる甘い喘ぎに、お侍様は顔をあげ、耳元で静かに囁いた。

「俺の名前、銀時ってんだ」

銀時様。髪色の通りの名前に、私は小さく笑った。

「俺だって、ずっとお前を抱きたくて仕方なかった。……なぁ、お前の本当の名前、なんてぇんだ?」

手は下腹部を愛撫したまま、銀時様は口許を緩めて尋ねた。喘ぎ声を漏らしながら、私は本当の名前を告げる。

千草、と。

此処に売られてから、呼ばれたことのなかった本当の名前。

「千草……いー名前だな」

銀時様は何度も何度も私の名を口にしながら、愛しむように私のナカに熱を埋める。
確実に折檻部屋行きだろうが構わない。

「銀時様ぁ、銀時様ぁ……私をつれてって」

快楽へ、自由な外の世界へ……。
この恋は叶うはずもない。銀時様の熱に犯されながら、私は喜びと悲しみの交じった涙を流した。




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