焔が燃え立つような夕焼けの中、二人並んで歩く銀時と千草。

「ヤな夕日ですね。気味悪いわ」

額に手をかざし空を見上げて千草は言う。

「逢魔が時って言うじゃないですか。そんな言葉が似合う夕日よね」

銀時の一歩先を歩く千草は淡い後れ毛を揺らして頭を垂れた。抜いた襟から覗く白い項が丁度視界に入り、銀時は生唾を飲み込んだ。
旨そうな項だなぁ、おい。
胃の腑が悲鳴をあげた。今すぐにでも張り倒してめちゃくちゃに乱して食べてしまいたいという衝動に駆られる。

「銀さん?どおされました?」

千草の声に引き戻された。
なに考えてんだ、俺ァ。
邪念を振り払う。だが、心配そうに上目で此方を覗き込む千草の姿に、鼻腔を擽る花の匂いに、眩暈がした。
無言で千草の腕を掴み、路地裏へ引きずり込んだ。
壁に千草の身体を押し付け、手で口を塞ぎ、蜜の匂い立つ項に噛みつく。
細い肩が揺れ、戸惑いに濡れた瞳を向けられた。

「逢魔が時には悪い鬼が出るって知ってる?」

耳許に唇を寄せてそぅっと囁いた。
黒い瞳が不安げに揺れ、何を言っているのと言いたげな眼差しを寄越される。

「魔が差した、ってことだよ」

夕陽が届かない薄闇の中、緋色を禍々しく光らせて嗤う銀時にいよいよ恐怖を感じたのか千草が微かな抵抗をみせた。
だが所詮は女の細腕。容易く力で捩じ伏せ、千草を腕に閉じ込めた。
指の腹で項の真ん中を縦になぞると千草の口から甘い吐息が漏れる。

「おめぇ、首弱いもんな」

からかうように言って、今度は項や耳の裏を舌でねぶった。

「や、ぁ、ぎんさっ、こんなとこでっ」

かすかな汗の匂いと淫らな匂いに、抑えきれぬ淫欲が煽り立てられる。

「甘ぇな。おめーはよ。どこかしこも甘くていけねぇ。無理だわ、限界。ほら、こぉんなになっちまってよ。どうしてくれんのよ、これ」

千草の柔らかな双丘の割れ目に昂る熱を擦り付け

「悪いオニに喰われちまってくんね?」

白い項に噛み付いた。



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