檸檬の香りの満ちる場所で

「凪ー、お隣さんからレモン貰ったのー。海風さんとこにも渡すから運ぶの手伝ってよー」
「…」
「凪ー!」
寒い…
まだ、寝てたいのに起こされた…
「分かったー、すぐ行くー。」
今は大学2年の春休み。帰省してるのに毎年、雑用を手伝わされる。高校の時からそうだ。すこしはダラダラさせてくれてもいいのにね。それに今日なんか帰省最終日なのにさ
玄関まで降りてダンボールを持つ、フワリとレモンの香りが漂う。
民宿 海風か…ここにいくと毎年切なくなるんだよな…

それは俺、織笠凪(オリカサ ナギ)が中学の時の今と同じ時期の事だった。
俺の実家は瀬戸内海のとある島にある。レモンがよく取れるとこだ。もちろん島だから海も砂浜もあるし、ちいさな宿泊ができる所もある。その一つが民宿 海風 まぁなんともそれらしい名前の所だ。
そこに毎年高校の弓道部が合宿に来るのだ。弓道場があるからだ。まぁ、普通は大和撫子がたくさんいて出会いなんかも期待しちゃったりーとかあるだろう。だが来るのは工業高校。女子がいたとしても少ないもんだ。出会いなんてある訳もない。まぁ、いつもと同じでその時もそう思ってた。
でも、出会っちゃたんだよ。春もまだ来てないこの季節に似合わないほど爽やかな笑顔の人にね。男だけど。
たまたま先輩の知り合いがいるから内緒で会って遊ぼうってのについて行った時だった。運命だと思ったよ。女の子と、付き合った事もあったけどこんな衝撃は初めてだった。くしゃって笑う笑にやられたんだ。俺の中で雷が落ちたみたいだった。その時に恋に落ちたんだ。その子の名前は橘 晃人(タチバナ アキト)2つ上の高校1年だった。初日は自己紹介程度だったけど、次の日に会った時はウマが合い。はしゃいでいた。5月頃はレモン花の匂いが島いっぱいにしてていい匂いがするし花が意外と綺麗だとか話したりすると。また合宿以外で来たいとか言ってくれてるし!
晃人が好きなカメラも、教えてもらい綺麗に取れる方法を2人で探したりした。
最終日には次の年にも、合う約束をした。
次に合うまでの1年間は毎日何しようか考えたし最後にもらった、チェキも毎日飽きもせず眺めてた。
次に会ったときは告白するって決めていた。
連絡先なんて知らなかった。でもこんな小さな島だから噂なんてすぐ広まる。だからいつ来るかぐらいは分かってたんだ。


こっそり港まで見に行った。待ちきれなかったんだ。すると、向こうが気づいてくれて小さくてを振ってくれ、口パクで「また去年と同じ時間に」って言ってくれた。覚えててくれたんだ!嬉しかった!早く待ち合わせの時間が来ないかなとずっとソワソワしてて母さんに「なにニヤケてんの」って言われるくらいだった。
待ち合わせ場所に行くと、去年と同じ笑顔で待っててくれた。
「久しぶり、時間が空いたから早く来たんだ。覚えてる?」
「覚えてるよ!晃人の方こそ忘れてるかと思ったよ!俺は忘れなんかしないけどな!」
「俺だって忘れねぇよ。初めてであんなにウマが合ったのなんてそうそういねぇだろ
あ、そうだごめんけどこうやって会って話すのも最後になるっぽいんだよねー顧問が変わってさー。まぁ携帯は持ち出し禁止だけどとあえず住所教えるから手紙で連絡先交換すれば、話せるけど」
「それは俺もびっくりしたわ!
え…そうなの?うっわー残念だ!文字だけだとバカ騒ぎにはものたりねー」
良かった、ちゃんと話せる…でも今日が最後…だったら告白も今日しなきゃ…大丈夫大丈夫…よし。言うんだ…
「あ、そうだ俺さー彼女できたんだ。高校の子。で…」
え…彼女…そうか、そうだよね…晃人みたいな人がモテないわけないもんね…仕方ない…
「あ、そうなん?良かったじゃん。あーあ晃人に先越されちゃったなー。あ、そうだ時間大丈夫?やばくない?」
「え?」
ごめん、仕方ないとは思うけど今はまだ気持ちの整理がしたいんだ…勝手に気持ち押し付けておいて何言ってんだろうね。
「まだ、大丈夫だし何で泣きそうなんだよ」
「何でもないよ?泣きそうでもないし」
「やっぱり泣きそうじゃねえか」
「何でもないってば!」
「そう…か。とりあえずこれ、連絡先だから、住所教えとく。」
「ごめん…用事あったんだ…もう行くね合宿、頑張ってね」



それ以来連絡も取ってないし。もちろん会ってさえいない。島なんて来るはずがない、ましてや民宿の中で海風を選ぶ何てのも確率は更に低いだろう。なのに毎年帰って来ては運んでいるのだからなんとまぁ女々しいだろうか。

「海風のおじちゃーん、レモン持ってきたー」
まぁ、もちろん居ないわな。そりゃこんな所、しかももう、レモンの花も咲いてねぇしー!あーあ!今年もダメだー。拭いきれねー失恋。今回も雑用だけしかしてねーな。あーあ!
まぁ、帰って友達の自慢話でも聞くとするかねー。
いつになったらこんな意味の無い事を止めれるのだろう…時間が経てば止めれるのだろうか…

「凪ー、あんた帰って来ないんじゃなかったのー!ご飯用意してないわよ!」
「ごめんって、友達と過ごす予定だったんだけど、その子も実家に帰っててさー締め出された。だからしばらくはおるわー。ご飯は大丈夫ー食べてきたから。」
二ヶ月で帰省するってどうよ?こんなはずじゃなかった…また、手伝いかよー!それに今度はレモンの世話だから結構な重労働だし…。明日の昼からは休みらしいからまだマシかー。
「凪ちゃん、ありがとうねー助かったよー。」
「いえいえーお昼までだったし大丈夫ですよー」
「まぁ、そんな事いうなんて男前になってー。小さいときはすーぐ、休んだり抜け出したりしてたのにねー。」
「あー、それは言わないでくださいよー。」
「あーら、本当のことじゃないのー」
「すみませーん。」
「あ、はーい。なんですかー」
「写真、撮りたいんでがいいですか?」
「あー、どうぞどうぞー好きなだけ撮ってちょうだいな」
「ありがとうございます。」
「いいえー、いいのよー。
あ、凪ちゃんこれ持ってて小さい時からレモンの花好きだったでしょ?匂いはもう取れてるかも、しれないけど綺麗なのが今年は多かったから!」
「あー、ありがとうございます!」
「え?凪…?」
「え?」
嘘…晃人…?なんで?
「あき…と?」
「凪じゃん?久しぶりー!連絡来るの待ってたんだぜ?あ、写真も撮れたし歩こうぜ」
「あ、うん。」
「それにしても変わってないなー。」
「晃人だって変わってないよ。」
「…」
「…」
気まずい…だって本当に変わってないんだもん。カッコイイままであの笑顔も変わってない。
「そうだ、凪ってさ今何してんの?」
「普通に大学行ってるけど。晃人は?」
「俺は一応カメラマンしてるかな。それで凪がレモンの花の事話してたの思い出してさー。」
「覚えてたの?」
なんで...なんでそんな期待持たせるような事するの。
あぁ、まだこんなに引きずってる。時間がたっても駄目なのか..
「そりゃあな、あんだけ目ぇキラキラさせてたからな」
「そんなに?」
「おー、すごいキラキラさせてたぞ。」
「まぁ、好きだし、レモン」
「レモン好きってなかなか聞かねぇけどなー」
「仕方ないだろ、好きなんだから。」
「まぁ、いいや
そう言えばさ、覚えてる?最後の日」
覚えてるよ。今更になんだよ..!
「何が?」
「凪が泣きそうな顔して無理やり帰った。」
「ごめん。」
「あと、俺が彼女と別れた日」
「え?」
「ほら聞いてなかった、凪って話聞かないときあるよね。
その事の続きも言いたいし聞いてね。」
え?彼女できたばっかじゃなかったの?なんで?
「うん。」
「あの日さ、凪が泣きそうな顔してて言いそびれたんだけどさー告白しようと思ってたんだよね」
「え?部活の子に?」
「は?な訳ないだろ。お前にだよ!」
え?待ってなんで?
「なんで?なんで今更言うの!!なんで!」
「いや連絡先渡しても連絡よこさないし、今言うしかないでしょ」
そんな事言われても困るよ…
「あの時の続きを、言わせてください。織笠凪さん。私と付き合ってください。」
礼までして…
え…2回目振られるんじゃなかったの?
「凪…?」
礼の状態から顔を少し上げて晃人が見てくる。
「え…なんでからかってる?」
「これがからかってる顔に見える?」
眉を下げて聞いてくる。
「見えない…」
どうしよう。もう会える事もないと思ってたのに。涙が勝手に溢れてくる。
「お、おい。ごめん。そんなに嫌だったか?だったらもう2度と姿を見せないから泣き止んで。」
「ダメ…」
「え?」
「見せないなんて許さない。」
「凪…!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」

双方の片思いは実を結び、潮風がの匂いが檸檬の香りに変わり辺り一面に檸檬の香りが広がっていた。

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