霞と星の射る先は 一、足踏み-アシブミー

---トンッ
ピンと張られた強い弾力性のある膜を勢いよく貫く音がする。
その少したった後に春の柔らかい日差しに暖められた床を足袋が擦る微かな音がする。
静かな騒がしさの中、その人の周りには張り詰めた糸のような鋭い冷たさとも取れるような静寂があった。
一連の動作は終わりに近づきその人は礼をした。
その人を囲む空気や姿を純粋に、美しいと思ったんだ。


今、俺が来ているのは高校の部活動見学だ。
俺が入学した高校は広島県との県境に近い岡山県の工業高校だ。機械系、電気系、土木系それぞれ1つずつ科があり。俺が住んでいる地域の中で就職率がいい。
元々、技術とか図工が好きでその関係で就職したいと思いこの学校に入学した。大学とか専門っていっても他の勉強しないといけないし、普通科高校に行っていい成績じゃなければ推薦も取れないからな。
入学してすぐに言われたのが部活動には絶対入る事。就職のために運動部が望ましい事(求人票に運動部を続けた者と言う条件をつけている企業が増えているらしい。)だった。中学の時にしてた。テニス部にしようかと思ったけど弓道もかっこいいから迷っていたからとりあえず練習があった弓道部に来た。

礼が終わり、境をその人が越すと今までの静けさが嘘のように辺りが騒がしくなる。
「うっわ、めっちゃ緊張したぁぁ」
「オガちゃん、そんなこと言っとるけどいいの出たんじゃねん?」
「先輩方こそ綺麗でしたよ。」
「そりゃ二年に負けれんじゃろぉが、一年の前で」
「というか先輩方みんないつもより遅くなかったですか?足すげえ痛いんですけど」
「気のせいじゃろ」
「嘘つかんでくださいよー」
「バレたかwいい練習になるじゃろーが落は」
「いやー。静、調子ええがー」
「うん、自分でもびっくりするくらい、いいのでとったと思うわww」
「はい、来たドヤ顔ー。顔がうるせんじゃw」
「え、待ってひどい。そんな風に今まで思っとったん?傷つくわー」
「傷ついてないくせに言うなーw」
「さ、一年達よ。どうだった?今したのは審査練習って言うので本来の型を重視した練習で審査のためにしとるやつな。で試合の時は四本持って的に当てることを目的にする練習があるんじゃけど..」
初めに射っていた先輩が話しはじめる。
「司ー、一年が飽きてきょーるでー」
「あ、今しゃべってるのが部長なー
まっじめそうでしょ?でも意外といじられてたりするからw」
他の同級生たちと同じようにポカーンとしてたら。"オガちゃん"と呼ばれてた人、俺が目を奪われてた人が話しかけてきた。隣の同級生にも「な?」と謎の同意を求めたりしてる。
弓を射ってる時とはまるで別人じゃな。軽い感じだしカラカラ笑う。
「おい、シズー。一年に無差別に絡むなー。困っとるで。どうせ知り合いじゃなかろーが。それにそこ二人も科が違うし友達じゃなさそうじゃしな」
「いいじゃんかー晃人も親睦を深めようぜー」
「親睦を深める前にせめて部の説明をしろ。せっかく来てくれたんだぞ」
「おーい、ちょっといいか皆!」
あ、部長だ。
「今、先生と話たんだが今日はもうまとまって説明はしないから適当に各自、二・三年は一年に部の説明とかをしてくれ。その方が一年も質問とかしやすいだろうしな。一年は今も言ったけど質問とかじゃんじゃんしてくれー。じゃ以上だ」
「やった、ラッキー
じゃ、とりあえず自己紹介しとくわ。小笠原 静(オガサワラ セイ)。小さいにくさかんむりの笠に野原の原で小笠原。静かって書いて静。ちなみに二年な。呼びやすいように呼びゃーいいよー。」
だから"オガちゃん"と"シズ"か。
「俺は橘 晃人(タチバナ アキト)。二年な。」
この人はすごい爽やかに笑う人だな。
「えっと、一年の与一 扇斗(ヨイチ セント)です。中学の時はテニス部でした。」
「夜市?土曜夜市とかの?」
「あ、いえ。与えるに漢数字の一です。あと名前は扇に北斗七星の斗です」
「うっわマジかよ。そっちの与一かよwそれも苗字wwそれに扇ってまんまじゃねぇかwwww」
そっちとかあるん?変な苗字とは言われるけどさ!
「シズ失礼だぞ。それにシズも同じようなもんじゃが
まぁ、こいつはいつもこんな感じじゃけ。悪気は無いけぇ。許してやってくれ。」
「あ、大丈夫です。苗字が変とはよく言われますし。」
「まぁ、そういう事じゃないけどな。まぁとりあえず気にせんでええよ。
あ、そうじゃ部の説明しとらんかったな。んー意外と難しいな。部活一覧パンフにほぼ書いとるしな。なんか質問とかある?」
「あ、えっと。なんでここの弓道場は学校に無いんですか?」
「元々学校に弓道部無かったけぇなー。施設がないんだよ。だから町の借りてしてとんよ。結構遠いのになー。あーあ、道場建ててくんねぇかなー。したら部員も増えるとおもうのに。行くの面倒だし鍵の管理も面倒だし金かかるしさ」
「おい、本音と愚痴が混ざっとるぞ。」
「いやー、道場遠いのによー来てくれたわー。あ、ちなみに鍵当番が遅かった時とかはケータイいじり放題だからw」
「話をそらしたうえに、入部もしてない子にそんな事教えんな。」
「だって、そうじゃんかー」
「じゃけぇって印象悪くなるじゃろーが」
「あ、他には無いん?質問」
「特には…」
「だよなー、まぁ明日からは体験出来るし良かったら来なよ。体験じゃったら弓がひけるはずじゃけ」
「あ、そうそう先に言っとかんとおえん事があったわー。部活に入ってもしばらくは弓を引けんけぇなー。早ようて夏じゃろうなー、的に打てるようになるのは。それまで基礎練がひったすらある。それは代々そうしとるけぇ、経験者とかでも初めからじゃけぇなー。それ言っとかんと入ってすぐ辞める人おるしなー」
「あ、それは大丈夫だと思います。早くてって事は年によって違うんですか?」
基礎練が大切なのはどの部活でも同じゃろうし
「年によってじゃなくて、個人によってじゃな。武道じゃけ型があってその型からするんよ、で上手くなったら部内で審査して段階ふんで次のに移るって感じ。じゃけぇ、経験者の方が有利っちゃー有利じゃけど。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「っはー、思ったけど与一って礼儀正しいよな。」
わ、いきなり呼び捨て。やっぱり軽い..初めの印象と全然違うな。
「どっかの誰かと違ってな。」
「それって俺の事?え、晃ちゃんひどい」
「シズ以外に誰がいる。」
「与一ーひどいと思わん?ひどいよねー」
「えっと..橘先輩、そんな事は無いと思いますよ..?」
「ほら見てみぃ、与一もひどいって言っとるが!」
「そんな直接は言とらんが。それに与一君、騙されるなー。」
「いや、どちらともいい方だと思いますよ」
「何この子褒め上手じゃが!お兄さん照れちゃう・//」
「嘘こけー
てかまともな子が来た..苦労が減るぞ..」
にしても、二人ともすごい仲いいな。橘先輩もあぁ言っとるけど嫌いじゃない感じ。
パンパンッ
道場に手を叩く音が響いて部長が話し始める
「よし、見学と体験は原則五時までだから一年はもう終いじゃけ終了な忘れ物無い様にな。皆今日は来てくれてありがとうな。他の部も魅力的だと思うけど是非、弓道部に入ってくれたら嬉いわ。じゃあ、お疲れー。気をつけて帰れよー。」
「「お疲れ様でした。」」
一年全員で言う。
「おつかれー」
「また来いよー」
次々に、先輩達が言う。
道場を出てに振り返ると小笠原先輩と橘先輩が手を振ってくれていた。軽く礼をして帰る。
すげぇ楽しかったし、弓道部に決めようかな。
初めての体験にまだ少し興奮ぎみで帰路についた。

[ 2/2 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -