小夜子
2013/04/17 00:09

ブブブ、ブブブブブ
静雄は部屋に響き渡るバイブ音の方向へ手を伸ばす
僅かに届かない距離に、精一杯伸ばした腕は挫折をして虚しくパタリと落ちた
ベタベタと粘つく体を叩き起こすように、ごろんと安物のベッドから転げ落ちる
「…気持ち悪ぃ」
胸元あたりから湧き上がる吐き気と頭をかなづちで叩かれたかのような頭痛
この部屋に引きこもって何日経つだろう
意外とそんなに経っていないのかもしれない
引きこもっている理由は様々で、大きな原因は多分折原臨也だ
静雄と臨也はいわゆる恋人どうしで、7年間の交際のすえ去年同居にまで至った
そんな幸せな生活を送っていた二人だったが、同居3ヶ月あたりから臨也の体に香水の匂いが染み付くようになっていた
最初はこっそりと
でも、だんだん隠すことさえしなくなり、二人の家でまで事に至るようになった
最初は我慢に我慢を重ねて耐えてきた静雄だったが、我慢を重ねていくうちに心の病というものに侵されてしまった
臨也といることに耐えられなくなった静雄は、池袋を逃げ出した
幸い、新羅の知り合いの家を借りる事ができたので住むところには困らなかった
だが、生きる糧を失った静雄には働く事も、食べる事も、何一つどうでもよくなってしまい、ベッドや部屋でゴロゴロと寝転がって疲れたら眠りにつく。そんな生活を続けていた
そんな毎日だったためか、病のせいか、元々細かった静雄の体はみるみる痩せて骨のようになってしまった
染めていた髪もほとんど茶色くなってきている
このまま死ぬ事ができたらどれだけ楽だろう
そうウトウト考えながら瞼を閉じた





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