空契 | ナノ
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1.世界が始まる (1/4)

たまに、
誰かの声が聞こえる。


すぐに忘れてしまう、
自分が嫌だった。





「……………腹減った」

ぐぅう、
部屋に鳴り響いた自分の腹の声を聞きながら、
俺は小さく、掠れた声で呟いた。
自分は仮にも女なのに、女らしからぬ枯れた声だ。

そんな声で今更そう呟いても、何も変わらない現実にため息が出る。分かってるともさ。なにも変わらないことなんて。

それからしばらくの沈黙後、もぞっと布団の中から手を出す。
枕元、ベットの横に置いてある小さなタンス。
その小さなタンスの上に、何故か震える手を伸ばすと、柔らかい…布に触れる。
白い、四角い布にゴムのような紐……、俺の愛用…なのかな…まぁいいや、
とりあえず、そう。医療用眼帯、である。

のそりと起き上がりながら、眼帯を左眼にして俺は時計を右眼のみで探した。
起き上がった時に、ずっと首にかけっぱのままの───水色の小さな笛のペンダントが、きらりと輝いた。

いつもと同じ所に時計は置いてあるのに、それを見付けるのに時間が掛かるのは記憶力の問題ではないだろう。
頭が回らねぇな…何て考えながら、やっと見つけたデジタル時計の画面を見る。
しかし、視界がぼやける。見えない。

空腹感で気持ち悪くなったが、何とか吐くのは免れた。
…なんか、頭痛いし。腹、減ったし。

なんか食おうと考えたが、この無駄にデカイ家にはなんの食料もない。
親も、仕事やら何やらで居ない。
そんな状態が、1週間以上は続いた。
ケッ、あんなのが親だとか世も末だ。
1週間以上、水で飢えをごまかしていたが、そろそろ限界だ。
何か買いに行こうとしても金がない。使い果たしてしまった。
と言うか、そもそも気力が無い。
誰かに助けを求める?
しかし、生憎…俺には“繋がり”はもうない。
寂しい人間だって?そんなの理解してる。
だったら、ポリスに電話?
それか、救急車ヘルプ?…大げさにしたくないから無理だ。

…あーもーこれ……、

「死ぬっしょ…」

フラグですね分かります。
所々、寝癖で跳ねてる髪をガシガシと掻いて、そのまま俺は倒れた。しかも、横に。
ベッドに倒れてくれたら良かったのに……なんで、わざわざ横に…床に倒れたんだよ、自分。いてぇ。
ごづりと頭を床に打ったら、え、うそ、気が遠くなった。
ヤバイ、ヤバイ。死亡フラグが今立った。
さぁ、どうしよう。

「…………いや、寧ろ…」

このまんま死んでもいーかな………なんて、馬鹿みたいなコトを考える自分に苦笑する。
そんなの、違う。
許されないなんて分かってる。

自分には、約束がある。
自分から結んだ約束だ。
だったら―――さぁ、
守らなきゃ駄目だろ。
それと…謝らなくちゃなぁ……。

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