40.predestined encounter (1/5)
そいつはいつも眼鏡をかけていた。
出会った頃からずっと眼鏡をかけていて、外しているのは日常生活に支障をきたす時のみで、だからと言って、そいつの視力が悪いとか、そういう訳ではないようだった。
ほぼ伊達眼鏡のように、入っているレンズの度はなく、ただサングラスのようにうっすらと色が入っていた。
そいつに、何故いつも眼鏡をしているのか、聞いてみた事がある。
「眼、っつーのはな、
嘘がつけねぇ、心を表すものだよ」
その答えは相変わらず、よく分からない、そして彼らしいようなもので、
その時の俺は理解できなかったけど、したつもりになって、へぇと呟きじっと彼を見詰めていた。
ふと彼の、眼鏡の奥でぎらりとした感情が、こちらを見る。
いつも俺は俺は身を硬くして、視線を逸らした。眼鏡越しでこうなのだから、もしその壁がなくなったら自分はどうなるんだろうか。少し怖い。
それをそいつはどう思ったのか分からないが、くくと喉を鳴らした。
そして「お前、今“相変わらずよく分からない”って思っただろ」と言い当てられ項垂れた。
……こいつ相手にはどんなに取り繕ってもうまくいかなったのは未だに覚えている。
まぁ、あの時の自分は、今よりも子供で分かりやすい反応だった、というのもあったが…今の自分でもなにも隠しきれない気がする。
そんな彼は、いつも人の眼から情報を読んでいたらしい。
「眼は心を写し出す」
───濁っている眼、硝子玉のような眼、鏡のような眼、真っ直ぐな眼、綺麗な眼、無機質な眼、
眼というのは、様々らしい。
だとして、そいつの眼は一体なんだろう。
全てを見透すような、人の心にするりと入り込んでくるような、恐ろしい眼は、
その、特殊すぎる色を滲ました、その眼は、
その記憶を、ふと、思い出した。
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