37.激突 (1/8)
大きなハンマーにでも殴られたような衝撃。地面に打ち付けられ、そしてやがて壁に背を打って息が止まる。
なにかが折れて軋む音が耳に残る。息ができないほどの痛み。
歩み寄る江臨の足音が、響く。体は動かない。
視線のみ見上げる。
「貴様が先に刃を向けたのだ」
『ならば、
然るべき罰を』江臨が、死神のように見えた。
俺を浚っていく、死神。
アースは、片手で玩んでいた、俺が投げたナイフの刃を自身の首にそえて見せ付けるように笑う。
硬化させたそのハサミを振り上げながら距離を縮めていく、死神。
カツン、カツン、カツン、音が近付く、ぼやけた視覚の中でも赤が近付くのも見える。
そして、やがて目の前で止まる。
音。
振り上げたそれを降り下ろす音。
風を切り裂き迫る音。
それが聞こえた瞬間、その声は聞こえた。
「まぁ、
貴様のそれがなくてもどうせ、こうなっていただろうがな」
そして
───
死ぬな、レオ。その声が静寂の中、聞こえた。
嵐がやってくる。
拐われたあの日々が、甦る。
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