3.おれ+キミ (3/6)
「(………ツンデレ?
もしくは、クーデレ? かわいいなオイ)
君の生まれは…どこさ?」
『……、…トウカの森だ』
短く返された素っ気ない言葉に、俺はクーデレを確信。デレ希望。
あと、何か事情がある事も悟った。
キモリの、眼が、一瞬細められていて、何となく、何かを感じた。気がした。
って、そーゆーディープな話は置いといて…………、
「トウカ………トウカの森っつーと…、
ホウエン地方か…?」
『…言葉が…、』
「あ」
───微かに眼を見開く彼の反応を見るからに、俺のこの能力は本当に異質なんだろう。
普通とは違う扱いを受ける可能性がここでグググーンっとアップした。泣きたい。
こんなんで下手に有名にでもなったら困るなぁ。いや、面倒だなぁ。
でも、ポケモンの言葉が分かるなんて便利ではある、かも。
そう思う俺は自分中心だ。
けれどこの考えを表に出さずに、俺は自慢気にニヒルな笑みを浮かべて頷く。嘘。全然自慢でもなんでもない。
「ああ、通じるぜー」
だからと言ってもごまかす意味もなくて、あっさり肯定した。
更にキモリは驚いているようだった。可愛い。
そんなに変?
「ホウエン地方…か」
元の世界で言えば……九州かな。いや、地理苦手だから分からんが。
「……随分遠いトコから来たなぁ」
『…此処は、何処だ』
ん、まさか知らない…?
「鋼鉄島だってさ」
『…』
「…シンオウ地方だ。
ホウエン地方から…北の」
鋼鉄島と言っても、キモリは何処だったか分からなかったらしい。
無言で眉間(眉ないけど)に皺を寄せていたから、分かりやすく言うと、さらに眉間の皺を深くしていた。
『なんでシンオウ地方』って感じ。 つー事は…、
俺は胡座をかき、頬杖をつきながらキモリを見詰めた。
「何で俺の鞄に入ってて、ここにいるか分かんねぇ?」
『…お前が俺を捕まえたのか』
「んいや、
違う違う」
『…………じゃあなんだ』
訝し気に睨まれて(やっぱり可愛い)、返す言葉はただ一つ!!!
「
分からねぇ!」
『
自信満々で言うな』
ふん!と胸を張って宣言すると、キモリに突っ込まれた。当然か。
でも分からんもんは、分からん。
「んな事言われてもなぁ…」腕を組んで空を見上げた。
……ああ、
綺麗な夜空だ。
俺のいた世界じゃ、こんなに綺麗じゃなかった。それが俺の世界との差。違い。
俺は紛れもなく、違う世界にいる。ここに居る。
「………説明、できないよなぁ…」
腹減りすぎで気ィ失って、
気付いたらトリップしてて、
鋼鉄島にいて、
ポケモンの言葉が分かって、
キモリが入ったボールがあって、
王道です。って言われても、へぇとは思うけど納得はできない。
……王道、なら、こーゆー場合って………、
「(伝説の、ポケモンとか、)」
伝説のポケモンが「あっはー、手違い手違い★」って言ってトリップさせたパターンが多い……………あ、今自分で考えてイラッとした。そんなワケ、ねぇよなぁ?
「……それがマジだったら、そいつ殴ってやる」
俺をこんな所に連れて来やがって………面倒すぎんだろ!
ポケモンは好きだ。
愛してるさ。あいらぶゆー。
トリップもいいなとは思っていた。憧れだ。
けど、状況が状況。今は、素直に……喜べない。
「(約束……)」
星に、笛のペンダントを翳した。ストーンが、きらりと煌めく。
そして、親友の泣き顔が浮かんだ。
思い出したくもない。
どうしよう。忘れちゃおっかな。面倒だし。必要ないし。
でも、この約束は忘れない。
だから、はやく―――、
「帰んねぇと…」
帰って、謝って、約束を守って…、
それで─────、
─────────それで?
それで、一体俺は、
どうするつもりなんだろうね。
「――――よっしゃ!
とりあえず話はまとまった」
俺は立ち上がると俺は、顔を引き締め、拳を闇空に突き上げた。
突然で、キモリがびっくりしていた………というか引いていた。
ははは、俺ぁめげねぇぞぉ!
『…何がどう纏まったんだ』
「とりあえず旅して、俺ぁ家に帰るってゆー風にまとまった」
そう言いながら視線は白い鞄。
鞄に散らかしたボールとかを詰め込んでいく途中、その内の一つに手を止める。
キモリが入っていたボールだ。
「…とにかく……、
情報が欲しいんだよな…」
何がどうしてこうなったのか、知りたい。
けれど、何より最優先なのは俺の帰還!
無事に帰れたら事情とかすっごくどうでもいいし。
「だから、旅しよーかなって」
「という訳で、」俺はキモリが入っていたボールを彼にほうり投げた。
驚いた様子の彼は、慌ててそれを受け止めて、俺を見据えてくる。
『…何のつもりだ』
見据える。
睨むの方が正しいかな。
「……」
その目が────あまりにも───、
───うっかり浮かんだどうでもいい言葉を忘れようと俺はへらりと笑って、ごまかす。首を傾げた。
「何のつもりって何が?」
『………。
…俺を……、』
ぷつりとそこで一旦、キモリは言葉を切った。
それから、眼を、細め、考え直したように再び言葉を繋げる。
『…俺はお前に捕まったんじゃねぇのか』
「違うなぁ。
君の発言から予想するに、君にはトレーナーが居ないんだよな?」
『…、…あ…あぁ』
頷くキモリに、おやと瞬きをする。
今…なんか、なんつーか……………嬉しそうだった?
多分、俺じゃなきゃ気付く事はねー程の、ちっせぇ違いで、仏頂面とあんま変わらんが。
……なんだ?
見間違い…………か?
*← →#
3/6
back top