空契 | ナノ
2.夢だと言って (3/5)

コロッケ 10つ、
焼きそば 3杯、
サンドイッチ 5つ、
ラーメン 2杯、
炒飯 3杯、
お茶 11杯、
以上の朝餉を、おいしくいただきました。

かたん、
緑茶を飲み干し、コップを机の上に置く。
それから満足気に息を吐いた。

「ふー……久々にがっつり行った気ィする…。
うまかった」
『行った気ィする……ではなくて、普通に行っただろう』

俺が綺麗に食べ 机の上に並べられた空になった皿を眺め、ルカリオ(仮)が冷静に突っ込んでくれた。
いやぁ、律儀(?)だなぁ。そしてココはあえてのスルー。

『……と言うか、
他人の家で遠慮もなく……』

ルカリオくんは俺の食べっぷりに、若干引いていた。だろうな。うん。
それが普通の反応だろうに、ゲン(仮)は、
「こっちも作り甲斐があって良かったよ」なんて爽やかに笑っていた。
見ているこっちがついつい遠慮してしまいそうになる。いや、しないけど。
でも、どう考えても普通じゃない反応…。

「君が食べ終わった所で……自己紹介するね。
俺は、ゲン。
此処は鋼鉄島にある 俺の家だよ」

……やっぱりゲンなんだ。
なんか、人生を諦めなければならない気がした。

「こいつが相棒のルカリオ」
『以後よしなに』

「……よしなに…?」

よしなにってなんだ。
疑問を持ちながらも、お辞儀されたので一応お辞儀しかえしとく。
そしたら、ルカリオがなんか……驚いていた。
んだゴラ。俺だってお辞儀ぐらいできるわ。

「…で、
君は?」
「、レオっつーもんです」

名前を聞かれ短く名前のみを答える。ここで、本来なら苗字も聞かれるのが当たり前だが、冷静な脳が一瞬待ったをかける。本当にここが、あのポケットモンスターの世界ならばと考えてみた。
ゲンとルカリオが目の前に存在する時点で、それは確定されているものだが、ここはあえての仮定。だって信じたくない。
仮定の話だけど、本当にここがポケモンの世界ならば、名乗るときは下の名だけでいいんだと思い直し、短くそう名乗った。
マサラタウンのレオ!とか言えたらカッコイイんだけどねー。

「(苗字名乗んないでいいのってうれしいなぁー)」

そして「ココ、ドコっすか」と問えば「鋼鉄島にある俺の家だよ」と当たり前のように返ってくる。
さっきも同じ事言ってたな、そーいえば。ナニソレ泣いていい?
ぐすんっと零れている訳がない涙を拭うとルカリオに引かれた。
酷いねルカリオキミ!

「所で……、
レオ君は何で倒れてたんだい?」

……名前呼ばれた。
地味に感動してしまった。これが夢だとしても、かなり幸せなものだ。
…じゃなくて……、
倒れてた。その言葉に瞬きを一、二回。
倒れてた。どこで。…鋼鉄島、で?
えー?

「(心当たりはねぇけど)」

あえて言うならば、

「食いモンがつきたんです」
「…………行き倒れ?」

「ですね〜」

……空気が凍った。
そして、あながち嘘ではない。
家では食べ物が無さすぎて倒れたのだから。
嘘ではない、はず。多分。


 *←   →#
3/5

back   top