序章:ゼロ
これはゼロから始まり、
ゼロに終わる、物語。
さぁ、どこから語ろうか?
ゼロから語る?
───ゼロになったところから?
いいよ。
語ってあげよう。
「大丈夫」
人がいつもより多い、雪の降る夕闇の街で、
彼はその言葉を残して、彼女を残して消えたのだと。
「……だいじょ、……ぶ」
夕日で真っ赤に染まったその街で、
少女らは出会い、
「エン……───ッ!!」
そして、失う。
「だいじょうぶ」
「だいじょうぶ、だから、さ、レオ、」
誰かの悲鳴が聞こえる。
真っ赤な夕暮れの中で、飛び交う声。
悲鳴。
息遣い。
寒い。
凍えるような空気の中で、手が小刻みに震えているらしい。
どろりと、紅く濡れた手。
──────彼を奪った、その、手。
その日、
エンは死んだ。
とある少女の存在によって、
殺され、消された命。
縁。
繋がり。
夕暮れ追想曲
さぁ、語ろう。
これは、
出逢い、
失う、
四人の終わりの物語。
*← →#
2/9
back top