ツワブキ | ナノ
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黄色い花の名 〔 1/3 〕




────君は、誰?



──君は何処から来たんだい?
──君は怪しすぎるんだよ。
──得体が、知れないんだよ。

───君が1番怪しいんだ。

────もしかして、
今回のプテラも、君がやったのかな?



ごめんね。嘘だよ。

ごめん。
ごめん。

だから、


──ツワブキ ダイゴさん。

──俺は、確かに周りから見たら不審者にしか見えねぇのかもな。


普通じゃないから。なんて、自嘲しないで欲しい。
違う。言わせたのは僕だ。


───それで結構。
疑うんなら、どうぞご自由に。
でも、俺は否定も肯定もしねぇ。俺にだって言いたくねぇコトはあるしさ。

────お前もそうだろ?
な、ツワブキダイゴさん?


僕から一歩踏み込んだくせに。
それが底の無い闇の渦だって知るのは、今だと思った。嘘だ。まだ何も知らなかった。

でも警鐘。警鐘。本能が感知し震えている。


──なぁなぁ?
御曹司サマ。

───お前だって、言われたくないだろ?

親の七光だとか、
親のコネを使ってるだとか、
お坊ちゃんだってだけで、
そりゃあ嫌な目には思いをしただろうな。

──“みんなして、見ているのはなんだ?”

“どいつもこいつも、みんな見てるのは表面だけ”

“俺は親のいい宝石だ”



「レオッッッ!!!」


怒りに悲しみが渦巻き混ざりそして爆ぜる。
皹が入った仮面が、ぱきりと音を立てて粉々に割れた瞬間だった。



僕がこのクロガネシティを訪れてから、3日後、
「あー長いロスだぁ」とダルそうにぼやきながらもレオは、ヒョウタとのジムバトルに勝ってしまった。

ヒョウタもショックだったのかもしれない。
今まで負けた後なんて数少ないし、一度は勝ちを確信した勝負も負けてしまったのだから。
だけど僕もそれなりにショックを受けている。
レオが行ってしまう、という個人的な事情が怖くて堪らないのだ。

そして、やはりレオはバッチを嫌々ながら受け取ると、すぐにジムを出ていった。
僕も慌て追い、人気の少ない通りで彼女を呼び止める事ができた。
声をかけて、僕が吐き出した台詞は全て“建て前”である。

何でも良かった。
何でもいいから理由をつけて彼女を引き止める。
それが狙いだった。
でも行かないでくれと言って、聞いてくれる筈もなく、だから僕は実力行使、する事を決めたのだ。

レオがプテラを操った犯人だとは微塵も思っていないが、隠し事をしているのはは確かだ。

その怪しい部分を突き付ければ動揺するはずだから、そこを狙って僕は鋼鉄達の力を借りて彼女を取り押さえるつもりだった。
その後はあまり考えていない。
ただ、彼女を逃がしたくないというエゴが生んだ結果がこれだ。

だが─────、
鋼鉄から咎めるような言葉がかかり、ふざけるなとアイクが唸る。
他者はそうやって、表情を変えるのだが、しかしレオは─────笑みを消さない。
僕みたいに、下手で粗末な偽物とは違う。
ただ、ただ、笑顔が浮かんでいるだけの表情。
そのまま、不敵な笑顔のまま彼女は僕を─────ひたすら蔑んだ。

それらは僕の禁句だったが、レオはそれをあえて狙ったのだと、今なら分かる。
結果、彼女はアイクと共に逃走した。



───じゃ、
縁があっても会わなきゃいーな!


レオからの無理矢理な言葉に、僕は少しも動けなかった。



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