#no title 18.12.03 07:02 #愛してるって言われた@祐介 テストは当たり前にやってくる。ペンが紙の上を走る音だけが聞こえる図書室で勉強をしていた。 「…隣、良いでしょうか?」 「あぁ、構わない」 はて、彼女は誰だっただろうか。良く分からないが視界の端で捉えた癖一つない絹の様な真っ直ぐの黒髪が綺麗だ。思った時には俺は顔を上げて彼女に視線を送っていた。 「…お前か」 「ふふ、私、ですよ」 小さく微笑んだ彼女は俺の大切な人だった。彼女は気付かなかった事に怒る訳でもなく、寧ろそんな事を気にもしていない様に何も言わずに隣の席に腰を下ろした。 「すまない…」 「どうして謝るのですか?勉強に集中していたんですから、何も悪いことはしていないですよ?」 「あぁ、ありがとう」 私語厳禁の図書室、必然的に声が小さくなる関係で俺たちの距離は自然と縮まっていく。 「あのね、祐介くん。私、言いたい事があって祐介くんを探してたんですよ」 「うん?なんだ?」 「私、祐介くんの事、愛しています」 カタン、と俺の手からシャーペンが落ち彼女の方へと転がって行く。変わらず小さく微笑み俺にシャーペンを手渡した。 「…まさか、今日は四月一日じゃないぞ」 「あら、知ってますよ?嘘では無い、本心です。私の気持ちを嘘にしないで下さいな」 「…いや、まさか」 好きとも言った事もない彼女が、いきなり愛してるだなんて情熱的な言葉を伝えてくる事が信じられなくて彼女を凝視する。というより、なんだ、いきなり。友達に揶揄かわれた、とかだろうか。 「…嘘じゃないんだな?」 「嘘じゃないですよ?」 「本当に嘘じゃないんだな?」 「はい、嘘じゃないです」 どうして信じてくれないの、なんて普通の女子なら言ってきそうなものだが、彼女は何も言わずただただ俺に愛の言葉を囁く。まるで聖母の様だ。柔らかな表情の彼女に見惚れていると、彼女は一瞬目を細めて、俺に口付けた。 「愛してる」 唇が離れたかと思えば耳元で囁かれた。それは至極真面目な声色だった。 18.11.19 19:09 #愛してるって言われた@竜司 「りゅーじじゃん!ね、いまひま?」 「おいコラ敬語使え一年」 「そんな事言ったってさー、りゅーじだって生徒会長に使ってないじゃん!」 「俺はいーの」 「はぁ?なんで」 「なんでも」 「なにそれ!ちょーリフジン?じゃない!?」 ギャーギャー騒ぎ立てるこのクソ生意気な一年のギャルは一頻り俺に文句を言うと何が楽しいのかニコニコと俺を見上げてくる。コイツは校内で俺を見かける度に絡んできて、俺が暁とか杏とか三島とかといる時だけじゃなく、真や春と一緒でも変わらない態度で絡んでくるんだからある意味スゲェと思う。つーことを言ったら似た者同士だと誰かに言われたけど、俺はここまで学校楽しんでねぇから全然ちげーんだよなあ。 「ねえ、りゅーじ!」 「だからなぁ…はぁ、まぁ良いや。なに」 相変わらず呼び捨てにしてくるコイツに飽きれ、だんだん相手すんのもメンドクセーと思いつつ腰に手を当てどっか晴々した顔をしてる一年を見やる。 「愛してる!」 「…はぁ?」 いきなりこんな廊下で何言い始めてんだ、と余りの意味の分からなさに気が抜ける。だけどコイツはそんな俺を気にもせずやっぱりニコニコしてるし、言い切った、ってなんか清々しい顔をしてるもんだから俺は思わずお礼を言ってしまった。 「……ありがとうございます?」 「なんで敬語ーーー?ウケるー!」 言いながら急に抱きつかれて受け止める。離れろ、と肩を掴んでも逆効果で俺の腰に回された腕に力が込められた。 「あはは、りゅーじ体温たかーい!つーか腹筋ちょー硬いじゃん!やっば!」 顔を上げたコイツはやっぱり楽しそうに笑顔を浮かべていて、なんかスゲー悔しいけどちょっとだけ可愛いって思った。 18.11.19 18:31 #愛してるって言われた@主人公 18.11.19 17:50 #P5D 18.08.22 00:29 |