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五年生も無事に終わり、家に帰れることもあってか足どりが軽かった。

アンブリッジはいなくなり、いつものホグワーツでの生活が訪れ、私は無事に退学処分を免除された。
免除された途端待っていたものはフクロウ試験だ。あの時試験をメチャクチャにしてしまったため全員受け直しとなったが、アンブリッジがいないおかげでみんな自分の精一杯の実力で臨めたと思う。

そんな私も優を幾つか取ることができたから、六年生からのNEWTレベルの授業に進む事ができる。あまりやりたくないし、就職とかも…考えたくない。
でも卒業すればドラコとずっと一緒にいられる。それを考えたらなんだか卒業が楽しみにもなる。


そんな六年生への思いを胸を踊らせて家へと帰宅した。



「ただいまー!」


しばらく静かだった。いつもならばお母さんが飛んでくるのに、今日はなんの声もしない。
しかも今日はお父さんもいるはず。
ルーファスは仕事でいないけど……。


疑問を抱きながら家の中へと足を進めた。キッチン、リビング、どこにも家族の姿は見えない。まして屋敷しもべのカロンすらいない。


「お母さん、お父さん、カロン…どこ?」



いい加減おかしいと思う。こんなに呼んでも見当たらないなんて隠れんぼでもしているのか?

眉間にシワを寄せながら歩いていると、何かにぶつかって派手に転んでしまった。


「いたっ!!何?」


足元を見るとそこには今まで捜していた両親の姿があった。


顔は青白く息をしていなかった。
死んでいたのだ。
足の力が抜けて床に崩れた。



「ちょっと待ってよ…な、なんで…」



挙動不審になる自分の頬には涙が伝わっていた。涙は止まることなく落ちていく。
その場で二人の手を取って大声で泣き叫ぶと、すぐに聞き慣れた声がした。



「レディー!!」

「ルーファス!?」



現れたのは義兄のルーファスだった。彼はかなり焦りながら手を出した。


「ねぇ!お父さんとお母さんが…!!」

「レディーここは危険なんだ!!早く手を取れ!!」



レディーは言われた通り、即座にルーファスの手を握った。すぐに姿くらましをすると、レディーの生まれた町であるカッスルクームへと姿あらわしをしていた。


当たりを見渡しルーファスへと視線を変える。



「どうしてここ…?ルーファス!!?」



ルーファスはレディーを抱きしめて泣いていた。そして奮える声で言ったのだ。


「父上と母上は死喰い人に殺された…昨日…」

「!?」

「レディーは父上の仕事を知っているだろう?」


レディーとルーファスの父親の仕事は父上の仕事は、ダンブルドア校長に協力してもらい、例のあの人が昔大量殺害をした時に出てしまった、死者数、魔力の放出具合、それらを研究する仕事だった。

そういえばルーファスから話されたことがあったと思い返した。



「それがバレたんだ。だから例のあの人は死喰い人に命じて殺した。俺は大丈夫だったけどもう、あの二人は帰ってこない」

「そ…そんな…。カロンは!?」

「屋敷で死んでなかったということは逃げられたんだと思う。どこにいるかはわからないが…」


ルーファスはレディーから体を放して真剣な目で見つめた。頬には涙が伝っている。ルーファスの涙は初めて見るが、あまり気分の良いものではない。



「レディー、お前ランペル家の名を捨てろ」

「な・・・何よそれ・・・」

「このままランペル家の名を名乗っていたら、お前は死ぬかもしれない」



ルーファスは顔を伏せてしまった。滴が土に落ちてジワリと広がった。
しばらく黙り込んでいるルーファスにそっと触れると、ルーファスは無理矢理つくった笑顔を向けて言った。



「レディー、もうバイバイだ!お前の本当の母親、サリア・エジワールには全て言ってある。あの母親の子供に戻るのは辛いかもしれない。だけどこれ以上いい方法がないんだ」

「待ってよ!!ルーファスと、家族じゃなくなるっていうの!?」

「あぁそうだ」

「嫌!嫌よ!!私はずっとランペル家の子がいいの!あの女のところに戻るなんて…!」

「お前を救うのはこれ意外方法がないんだ!!いつ例のあの人が義娘のお前を捜して殺すかわからないんだぞ!?あの人は父上に関係している者全てを殺す!!俺だっていつまでもつかわからないんだ!!だからお前はエジワールの名を名乗れ!!」



ルーファスの顔は涙でボロボロだった。レディーの翡翠色をした瞳からも涙が溢れている。


「ルーファス…」

「レディー、俺たち離れていても家族だから、だから・・・今は縁を切ろう。ドラコがお前を必ず守ってくれるはずだから」

「ルーファス・・・!!!!」


レディーが手を伸ばすと、そこにルーファスはもういなかった。姿くらましをして、カッスルクームから姿を消した。

目の前にいる義妹を置いて。



レディーはしばらく泣いた後、目つきを変えて後ろに佇む屋敷に目を向けた。


大切な家族は死んだ。
大好きな義兄に別れを告げられた。


だけど立ち止まってたら動けないから。エジワール家に挨拶を交わす。



‐‐‐‐‐


家の扉をノックすると、扉を開けたのは屋敷しもべだった。たいそう驚いた顔をして言った。


「また来たのですか…」

「ちょっとイロイロあってね。サリア…いえ、お母様に会わせてくれる?」



レディーが真剣に言うと、屋敷しもべは小さく頷いた。
家の中をしばらく歩いて、前にも来たドアの前にたどり着いた。大きく深呼吸をして扉を叩く。
好きじゃない部屋だ。何度きても。少し手が震える。




「失礼します・・・!?」


部屋に入るとすぐに誰かに抱きしめられた。甘い香水の香りが漂い、目を見開くとそれは実の母であるサリアだった。

泣いているのだろうか、サリアの目からは涙が溢れては落ちていく。
信じられないことだ。生まれて初めて母に抱いてもらったのだから。



「レディー……レディー、ゴメンね…私を許して…」


「は・・・?な、どうしたんですかお母様」


レディーは思わずサリアの体を押して離れた。抱きしめてもらったことなど今までないので嫌な気分だった。
ドラコに抱きしめてもらった方が何倍も心地好い。


「レディー・・・」

「貴女は私を嫌っていたじゃないですか!ルーファスと結婚させようとしたし、私をずっと愛してくれなかった!!全ては私の父親であるロデオ・ハウエルと重ねて!!」

「そう、聞きたかったの…なぜロデオを…」

「ルシウスさんが教えてくれたのよ、スリザリンと、私と、ロデオを怨んでいた理由を」

「そう、ルシウス・マルフォイが…。確かに私はレディーもロデオも怨んでた。大好きだったのにベラトリックスに奪われて、その上殺された。それに貴女は本当にロデオに似ている。だから怨んでたわ」

「・・・」



サリアがレディーの頬を撫でた。瞳をじっと見ながら髪へと手を滑らせる。



「でも、やっぱり無理だった。好きって気持ちが何年経っても消えないのよ。今も。
私は再婚をしてロデオの記憶を消そうとした。でも消えなかったの」



サリアは再婚相手と撮った写真を見つめた。レディーは複雑な気持ちを抑えてただ話しに耳を傾けるしかなかった。




「レディーをひたすら嫌えば、本当に嫌いになれると思ってた。でも自分の心を変えるのは無理だった。ロデオと同じ瞳を持って生まれた貴女を嫌えるわけなかったのよ……」

「・・・」

「だから本当は愛してるのよレディー。何度も何度も自分を殺してレディーを怨む‘フリ’をしてきたけど、もう終わりにする。エジワール家に戻ってきて」



サリアはレディーの手を取って泣いた。
複雑だ。今までのことを思うとすぐに許すなんて出来るわけがない。そんな単純なものじゃない。
でもサリアは確かに謝った。
私がドラコに恋をしていなかったらきっとわからなかった感情だと思う。愛した相手のことを思っての事は。



「お母様、本当のことを話してくれてありがとう。でもエジワール家の名を名乗るのは、全てが片付くまでにします…闇が消え去り、光りが世界を照らす時は、私はマルフォイ家のレディーになりたいから」

「レディー…貴女の好きな人って」

「ドラコ…ドラコ・マルフォイです」

「今まで貴女に娘としていい思いをさせてあげられなかったのだから、自由に生きてほしいわ。エジワールの名は好きに使えばいい、でも忘れないで、私は貴女を愛していること」

「はい…」


しばらく沈黙が続くと部屋のドアがコンコンと音をたてた。



「お嬢様、ランペル家から荷物を持ってきたものが」



エジワール家の屋敷しもべの後ろから、ヒョコッと顔を出したのはカロンだった。思わず涙が溢れる。無事でいてくれてよかったと。


「カロン!!」

「お嬢様!ご無事でなによりです」




この家にきてレディーはようやく笑顔を見せた。


(今日からまたエジワールの名を名乗る)
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