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グリフィンドールとスリザリンのクディッチの試合、見には行かなかったがなんでもグリフィンドールが勝ったらしい。よかった行かなくて。行ってたらパンジーの悪口を隣で聞かされてグリフィンドールの生徒には指をさされて笑われてただろう。
オルガと絶対パンジー興奮してるよね。なんて話をしていたら本当に興奮したパンジーが談話室に戻ってきて、思わず苦笑いをしてしまった。
もう夜だというのに物凄い騒ぎようだ。おそらく勝ったグリフィンドールは今頃お祭騒ぎだろう。


「グリフィンドールの奴ら!ドラコがいたら絶対に勝ってたのに!!」

「まぁまぁ、落ち着いてパンジー、夜は長いのよ。そんなに興奮してたら寝れなくなって美容に良くないわ」

「何言ってるのよレディーは!」


悔しくないの!?と続けて言うパンジーに悔しくないと言うと、彼女はキーと奇声を発しながら足をばたつかせる。これがめちゃくちゃ怖い。

これから行く場所があったレディーは部屋に戻ろうと足を進めると不意に腕を捕まれた。


「放してよランドール」

「ユックリしていけばいいじゃないか。予定ないんだろ?」

「それがあるのよ」


スルリと捕まれる手から抜けて、後ろを向いて手を振って談話室を後にした。


「レディーどこ行くんだ?」

「さぁ、わからないけど星かな?」


あぁ。なるほど天文台のとこか。と、ランドールは静かに頷いた。
星といえば、今日はドラコの姿を見ていない。
一体どこに…?


‐‐‐‐


部屋戻り雪の降る夜に出ても寒くない格好をした。まぁこんなもんだろうと思いながらドアノブに手をかけるとルームメイトの女の子が驚いたように目を開けた。


「あれ?レディーどこか行くの?」

「天文台」

「なんで?」

「今日流星群なの」

「雪降ってるのに?星なんて出てないよ」


眉を寄せるルームメイトは手を上に挙げて、まるでお手上げとでもいうような格好をした。レディーはそうね、と言いながら腕にしていたブレスレットを取って、ドラコからクリスマスプレゼントで貰ったバラのネックレスを首にした。フレッドとジョージは、今はさよなら。


「見えなくてもいいの、感じられれば。行って来るね。ブレスレットは私のベッドにでも置いておいて」

「付けていかないの?」

「今夜はこのネックレスだけあれば・・・」


わかったわ、と続けるルームメイトに微笑をして部屋のドアをバタンと音をたてて閉めた。


(これだけあれば…私は大丈夫)


‐‐‐‐‐‐‐


天文台への道のりはもう馴れたものだ。パンプスだと階段はやっぱり疲れるけど、今は早く天文台に足を踏み入れたい。
三年生でドラコに教えてもらった流星群。もう私のだけの思い出になっているかも知れないけど、もしかしたらドラコがいるかもしれないなんて淡い希望を抱いて、階段を一本一本、大切に歩んだ。


「うふふふ!」


突如笑い声が響いた。男女の影がこちらへと近づいてくる。


「大好きウォンウォン!」


ラベンダーだ。ロンの腕にしがみついて頬を寄せている。私の存在に気づかないのか何度も角度を変えてキスをしていた。
ハーマイオニーは、ロン。そう言ってやりたかった。ハーマイオニーは近くにはいない。二人は階段を上がって段差を作ってはキスをしている。

悪いがそこを通らなければ天文台へは行けない。なんとしてでも通らなければ。
二人の影を見ながら少し大きく咳払いをした。


「だれ!?」


ラベンダーが声を張り上げた。パンジー並みの迫力だめちゃくちゃ怖い。


「…レディー?」


ロンがこちらを見てようやく私に気づいてくれた。ラベンダーがガン飛ばしてきて本当に身が縮み上がりそうだ。


「あーごめんなさい。二人の邪魔をする気は無いのよ」

「私のウォンウォンは渡さないわよ!」


ラベンダーのヒステリックな声が響き私はムッとした顔でいらないわよと言い放ち二人の間を通って階段を上がった。


---


なにがウォンウォンだ。名前が違うじゃない。彼はロンよ。ロニー坊やよ。ドラコのことだってドラドラとは言わないわ。

イライラしたまま階段をどんどんと登っていく。空に近づくたびに体が冷えるのがわかる。もうすぐ天文台だ。
ドラコがいたら、私はなんと話をするのだろう。あなたが好きと伝えるか?それとも星を見に来たことを驚くか?どちらにせよ私の妄想だ。彼がいるわけがない。淡い期待を持つだけ悲しい。


「はぁ…」


うつむきながらため息とともに白い息が出たとき、自分の足は天文台へと踏み込んでいた。ゆっくり視界をあげる。

まさかだった。

階段を登りきって天文台に見えたブロンドの髪を持つ男の後ろ姿に、胸がドキンと跳ねたのだ。本当にいるとは思わなかったから。


「ドラコ・・・」

「エジワール!なぜここにいる!?」

「星を見に来たのよ」

「雪が降っているのに星?お前の頭はどうしようもないな」

「ドラコだってどうせそうなんでしょ?どうしようもない頭ね」


悪口を言われているのになぜか頬が緩む。手摺りに手をかけるドラコの隣まで歩んで懐かしむように口を開いた。彼の肩が少し動いて距離を開けられた。まぁいいだろう。逃げないだけ全然いい。


「・・・ねぇドラコ覚えてる?」

「・・・何がだ」

「ドラコが教えてくれのよ、流星群のこと。ドラコにとっては何でもないことだろうから、もう忘れちゃったかもしれないけど」

「・・・」

「私あの時の星空二度と忘れない」

「・・・」

「貴方に恋をした時だもの」

「・・・忘れるわけない」



小さな声で言ったドラコの声が聞こえなく「え?」と聞き返す。まるで顔を見られないようにするように、彼は顔を逸らしたあと、勢いよくレディーを抱きしめた。

心が追いつかなくて思わず目が点になってしまう。この間まで嫌いだと言われていた人物に抱きしめられているのだ。当たり前と言ったら当たり前かもしれない。
そんなことを思っている間に体を抱きしめるドラコの力がどんどん強くなる。


「ド・・・ドラコ?」


レディーがドラコを抱きしめ返したのはそのすぐ後だった。目を閉じて、ドラコの頭をそっと撫でた。
啜り泣く声。レディーの耳元では確かにそれが聞こえる。
彼が泣いている。初めて見た光景だ。今まで泣いた姿なんて見たことがない。体はガタガタと震え、抱きしめる力は強くて、嗚咽をあげる声も辛そうで…なんだか私まで泣いてしまいそうだった。


「ドラコ・・・?」


泣かないで。小さい声で囁き頭をゆっくりと撫でる。ドラコのサラサラの髪が大好きだった。今も変わらない。昔よりもはるかに大きくなった身長のせいで手を伸ばさなければならないが、今は抱きしられている。何度でも髪を撫でられる。
本当に久しぶりだ。彼に別れを告げられてからしばらくする。匂いも、体温も、愛しさも何一つ変わらない。ただ彼は何かに怯えている。体の震えと涙が収まらないのだ。


「・・・・・だ・・」

ドラコはレディーの耳元で鳴き声に混ぜながら、思わず目を見開くようなセリフを言い放った。
その言葉で周りの音が何も聞こえなくなる。どくんと心臓が跳ねて、止まってしまうかと思った。


彼は震える手に力を込めて、「好きだレディー」と言葉を漏らした。



あぁ、一体どういうことなの?



(嫌いと言われた口で愛を囁かれる)

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