次の日の朝、やけに早く起きてしまったレディーは欠伸をして頭をかいた。寝ようと思ったが二度寝したら確実に寝坊する。
友人からはスースーと寝息が聞こえる。眠るオルガに目を向けて、洗顔フォームと化粧品を片手に水道に行くと、先客がいる。パンジーだ。
パンジーは一度レディーと目を合わせるとすぐに逸らし手を洗った。
「おはようパンジー早起きね」
「・・・」
「パンジー?」
無言のパンジーに思わず名前を二度も呼んでしまった。パンジーは眉間にシワを寄せて蛇口を捻った。すっごく機嫌が悪い時の顔だ。
何かあったのかと思い少し距離を置いた。
「ドラコとどうして別れたのよ?」
突然口を開くパンジーにレディーは驚いたが、苦笑いをして同じように蛇口に手をかけた。
水がジャバジャバと音をたてて排水管へと流れていく。
「フラれちゃったの」
そこ言葉にパンジーはピクリと動き、水道の淵に手を置いた。
「・・・諦めてないわよね?」
「え?」
レディーが聞き返した瞬間、パンジーは涙目になりながらレディーの首の衿を掴んで叫んだ。
「諦めたら承知しないんだからね、私がドラコ貰っちゃうんだから!絶対に諦めんじゃないわよ!!」
「パンジー・・・」
息を切らせ、肩で息をするパンジーは鼻でフンッと言ってそっぽを向くと、自分の部屋へと帰って行ってしまった。
「パンジー、ありがとう…」
流れる水を手で掬う。水道水じゃない液体がポタポタと手の中に落ちていく。ごまかすように顔に水を浴びて、レディーはまた少しだけ泣いた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
部屋に戻るとオルガがもう着替えて待っていた。
鏡の前で髪をとかすオルガの後ろを通って、テーブルの上に置いておいたリングのピアスを手に取って耳に付けると、オルガが目を輝かせて言ってきた。
「ねぇレディー!今日久しぶりに三本の箒に行きましょうよ!」
「バタービール?」
「うん!!」
「オッケー、いいわよ」
そういえば最近飲んでいなかったと思い、オルガに向かって頷くと、彼女は嬉しそうに早速出掛ける準備を始めた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
雪が先程まで降っていたのか、地面には新しい雪が積もっていてフカフカとしている。ブーツを雪の中に踏み入れお店までの道のりをオルガとたわいもない話しをしながら歩いた。
「私冬は嫌いよ」
「どうして?いいじゃない冬」
「そう?だって寒いし、夏の方がいいわよ」
「冬は空が綺麗じゃない。私冬の星大好きよ」
空を見上げると雪のせいで曇り空だが、冬の澄んだ空は飛び切り綺麗だと思う。もちろん夏も好きだが。
そう言うとオルガに「理解不能」と言われたので足を蹴っ飛ばしてやったら報復のように雪を投げられた。
「冷た!!」
「蹴飛ばす方が悪いわ」
「あんたなんかこうよ!」
レディーも負けてられるかと言いながら雪を丸めて投げつけた。二人は三本の箒に着くまでにボロボロになったが、店内の暖かい空気を吸い込むと自然と笑みが零れた。
店主にバタービール2つと頼み、階段の裏の方の席に行くと見慣れた三人に会った。
「あらハリーにハーマイオニーにロン!」
「あ、レディーにオルガ!どうしてここに?」
「オルガがバタービール飲まないかって言ったから久しぶりにね」
お互い会話を交わしてハリーたちの隣の席に座ろうとすると、階段越しに見えた男に全ての感覚を持っていかれた。
「ドラコ・・・?」
その場になぜかいたドラコとレディーの目が合うなり、ドラコは不味いといった表情をしながら逃げてしまった。
「待ってよドラコ!!」
「ちょっとレディーどこ行くのよ!!」
親友の声が聞こえなかったわけじゃない。ただ私は逃げたドラコを追うのに必死で応えなかった。
「ドラコ!!」
(お願いだから話をさせて)
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残されたオルガはレディーを追うことができなかった。もしレディーがドラコと話せたら完全に自分は邪魔な存在だ。
おとなしくハーマイオニー達と一緒にバタービールを飲むことにした。
「ねぇ、レディーから聞いたりしてないの?」
「何を?」
ハリーが口をモゴモゴとさせながら目を合わせることもせずに聞いてきた。
「その二人が別れた理由とか」
「ハリー失礼よ!」
ハーマイオニーが机を叩いた。古い店だ。それだけでホコリが立つ。
「レディーすら聞かされていないのよ。突然別れを告げられたの」
オルガが顔を伏せると三人が顔を見合わせた。まるでやっぱりとでも言うように。
「マルフォイは死喰い人に?」
「ハリー!いい加減にして!!」
ハーマイオニーが叫んだその瞬間、老人が口を出した。よく知る先生だ。
「やぁハリー」
スラグホーン先生だった。
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