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カッスルクームは、最も古い家並みが保存されている村として有名だった。しかし目の前にある家は、ランペル家やマルフォイ家ほど大きくはないが、屋敷しもべを雇えるほどの家だ。

村に似合わない元の自分の家をレディーは懐かしいと思いながら見つめ、カロンへと向きを変えた。



「カロン、貴方に助けられるのはこれで二度目ね」

「実は…ダンブルドア校長がいらっしゃったのでございます」

「校長が?」

「はい、ホグワーツへ姿あらわしをしてお嬢様を助けろと。ルーファス様もご両親も酷く心配されていて…お嬢様がご無事で何よりです」



「そうだったの…ありがとうカロン。貴方にはちゃんとお礼がしたかったの。四年生のあの時も、今もありがとう。それに三年でホグズミード行きの許可書をくれたのもあなたね?」

「ハハハ、バレてしまいましたか。アロマ様に口止めされていたのですが」

「ところでなぜエジワール家に?ルーファスのところではなく…」

「お嬢様がここを想像されたのでここに…頭の片隅にここが写っていたのでしょう。わたくしもルーファス様のところへ行くとばっかり…」

「…」



再び屋敷を見やる。部屋の一角が明るい。おそらく母、サリアの書斎だ。



「ねぇ、カロン。会いたい人がいるの。…サリアに…」



レディーは目の前の家を見て言った。カロンは心配そうに俯く。


「大丈夫でございますか?」

「平気、私はもうエジワールには関係のないお客だからね」

「か、かしこまりました」

「何かあったらすぐにホグワーツへ飛んで頂戴。行き先はドラコの部屋よ」



カロンは頷き、エジワール家へと足を進めた。扉を叩くと新しい屋敷しもべが迎え、レディーを見て眉を寄せた。


(異端児がきたぞ)


---


「奥様、お客様でございます」



中から返事をされたのを確認すると屋敷しもべは扉を開け放った。


「どうも」


サリアは羽ペンを置いて腕を組んだ。相変わらずの眼差しだ。壁に穴が開きそうなくらい。



「何しに来たの。あなたはうちの娘じゃないはずよ」

「お礼に来たのよ」

「お礼?」



サリアへと足を近づけて立ち止まり、足を一歩下げて、頭を下ろした。
サリアは信じられないとでもいうように、目を見開いてレディーを見た。

顔を上げたレディーは、翡翠色をした瞳をサリアに真っ直ぐに向けて言ったのだ。




「…ロデオのこと聞いたわ。産んでくれてありがとう。それだけは、感謝してる」

「・・・!」

「カロン」

「はい」



レディーとカロンは手を取り合い、その場から姿くらましをして消える寸前で、サリアは手を伸ばして叫んだ。



「レディー・・・!」



サリアの前から二人は姿を消していた。
サリアはやり場のない手を押さえて涙をこぼし、その場に崩れ落ちた。
愛おしい娘を亡くした時のように。



「レディー・・・」


‐‐‐

レディーがホグワーツから退学になり、部屋で一人いたドラコは、レディーからのクリスマスプレゼントであるロケットに入れられた写真を見つめていた。

ランドールから強奪した、ダンスパーティのときに踊るレディーと自分の写真だ。よく撮れている。



「レディー・・・」



そう、彼女の名前をつぶやいた瞬間だった。ベッドの近くで物が大きな音を立てて落ちる音がしたのだ。
ホコリが巻き上がり、そっちに目を向けるとブロンドの髪が動くのが見える。



「ドラコ!!!!」

「!?」



そこから全速力で跳んできたレディーを両腕で受け止めると、ドラコ諸共座っていたソファーから思い切り落ちた。
姿現しをしたカロンは既にいなくなっており部屋には二人だけだ。



「レディー!!なぜここに、退学になったんじゃ」

「カロンよ!屋敷しもべのカロンに連れてきてもらったの」



溌剌としながら笑ったレディーの肩を掴むと、ドラコは一度ギュッと抱きしめてから嬉しそうに言った。



「と、とにかくスターシップやランドールに!!」



レディーはドラコの腕をつかんでニヒルな笑顔を浮かべながら言った。



「ちょっと待って!その前に私、やることがあるの!!」

「やること…?」

「普通魔法の呪文理論の試験あるわよね?」

「あ、ああ」



ドラコは思い出したのか頷いた。五年生は必ずフクロウ試験を受けなければならない。その成績は六年で反映され、就職先にも大きく影響する。

レディーは髪を指でクルクルと回し、片方の口角を上げて笑った。



「その時に面白いもの見せてあげるわ!ん?……ねえドラコ、その手どうしたの?」」



レディーが見た先にあったのは包帯を巻いたドラコの手の甲だった。レディーは手を掴んで包帯を取り言葉を無くした。

手は赤く腫れ上がり、血の後がいくつもあった。それはドラコがレディーが退学になったことへの悔しさで石の床を殴った後だ。



「レディーが大事だっていう証だ」


レディーがドラコの手に涙を零すと、頭を撫でられた。安心するような笑みを浮かべて彼は抱きしめてくれた。


「おかえりレディー」



(絶対に戻ってきてくれるって信じてた)

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