雪の中を歩くハリーたちの後をついて行くと、古びた店に着いた。
埃が溜まっており、山羊が逃げたのを主人が追い掛けて、どこかへ行ってしまった。
「うっわすごいホコリ」
「あの三人は2階に行ったみたいね」
「ねぇレディー、帰ろう」
オルガはレディーの服を掴んで、目をキョロキョロとさせた。ホコリの酷いこの店内を好きになれないようだ。
レディーはハリーたち三人の上がって行った薄暗い階段を目を細めて見つめた。
「オルガは気にならないの?わざわざこんな汚い店に来たハリーたちのこと」
「そりゃ気にはなるけどさ」
「じゃあ行きましょうよ」
「えー」と嫌がるオルガの手を掴んで階段を上がって行く。ギシギシと音を立てて階段を上ると、数人の声が聞こえた。
扉の前に付き、隠れて覗き込んだ。
何やら行列が出来ている。先頭にはハリーポッターとハーマイオニーが座っていて、並んでいる人は何かを書いているようだ。書き終わった人物に、話したことがあった人物がいた。ウィーズリーの双子だ。
「ねぇちょっと、何してんの?」
「あ!」
「これはこれは」
「レディーと」
「オルガじゃないか」
交互に言ってきた双子のフレッドとジョージに苦笑いした。相変わらず不思議な双子だ。
「何をしているの?」
「「ダンブルドア軍団さ」」
「何よそれ?」
レディーが眉を寄せて聞くと、ニカリと笑いながら二人は互いの顔を見合わせた。
「アンブリッジが呪文を習わせないからさ、ハリーに教えてもらうのさ」
「自分の身は自分で護れって言うだろ?」
「…へぇ、意外と考えてんのね。それでこの集まりってことか」
「キミ達二人も入りなよ!」
フレッドが笑いながら親指でハリーたちを指した。それがいい、そうしよう。と双子は話を弾ませている。
「私は遠慮してお…」
「私やりたい!」
オルガはレディーの肩に手を置いて、前にずいっと見を乗り出した。レディーは言葉を遮られ驚いていた。
面倒臭がり屋のオルガが自分から望んで言うのは珍しいことだ。いつもレディーの後ろで腕を組んでいるような彼女が、目を輝かせながらやりたいと言うなんて。
「オルガあなた…」
「私も自分の身を護りたいもの。レディーもやりましょうよ」
「わ、私はもう習うものは何も」
続きを言おうとすると、フレッドとジョージに無理矢理腕を引かれた。体のバランスが崩れてしまう。
「アンブリッジに盾突くんだ、楽しそうじゃないか?」
ジョージにそう言われ、オルガのアンブリッジから傷めつけられた手の平をチラッと覗いた。
傷はもうないが、アンブリッジは許せない女だと思うとだんだんとやる気が出てくる。
「…やってやろうじゃない」
ふん、と言いながら列に並び、ハリーとハーマイオニーの前に出る。二人は酷く驚いていた。アノレディーがきたからだ。
近くにいたディーンとシェーマスは自分の身を守ろうとフレッドとジョージの後ろに隠れている。以前首元を掴まれたことが相当怖かったらしい。
ハリーは目を丸くしながらレディーに尋ねた。
「キ、キミは、マルフォイの彼女?」
オルガ以外のその場にいた人達は、一歩後ずさりをした。やけに冷たい目線がレディーを刺す。
しかしレディーはだからなんだ、とでも言いたげに、ため息をつきながらペンをハリーに突きつけた。
「ええそうよ、私はドラコの彼女でスリザリン。オルガだってスリザリンよ」
「え、あ、ああ、珍しいね、スリザリンは二人しかいないよ。というか何でここがわかったの?」
少々早口で話したハリーに「あなたの後をつけて来たのよ」と言えば、「あ、そ、そっか」ととぎれとぎれに言われた。ハリーはあまり二人の参加を喜ばしく思っていないようだ。
というより、この軍団のことがスリザリンの生徒にばれたことが嫌な様子だった。おそらく先生にチクるとでも思っているのだろう。
冷たい目線のなか、一人の男が声をだした。
「・・・スリザリンなの?」
言ったのはネビル・ロングボトム。大層不安げにビクビクとしながらレディーとオルガを見た。
「スリザリンの何が悪いの?」
レディーは片方の眉を吊り上げて腕を組んだ。ディーンとシェーマスは「その態度が怖いんだよ!」と言いたげにレディーを見つめている。
「あ、悪くない、けど」
動揺するネビルに、レディーは真剣な顔をしながら詰め寄った。ネビルは完全に固まってしまっている
「私の親友がアンブリッジからの体罰にあって、傷を付けられた。傷は治ったとしても、私はこんなことをしたアンブリッジを許したくないの」
「レディー…」
「あのガーゴイル女を追い出すのは私一人じゃ無理だわ。だけど、みんなでやればなんとかなる。私はハリー並に呪文を教えられるし、みんなの役に立つと思う。だからスリザリンだとか、ドラコの彼女だからとか、そんなの言わずに仲間に入れて欲しい。オルガの魔法を高めるためにもね」
お願いよ…
レディーの声は部屋にいる生徒に聞こえていた。傷ついた生徒はオルガだけではない。各々感じるものがあったようで、レディーの言葉が胸に響いている。
レディーが言い終わるとルーナが前に出た。
「レディーなら入って欲しい。優しい人だもン。あと、そのお友達も」
「ルーナ…」
「いいんじゃないか?先生は多い方がいいだろハリー。彼女優等生だし。この様子じゃマルフォイ達にチクるなんてしないよ」
ロンがそう言うとハーマイオニーが頷きながら続けてハリーに語りかけた。
「そうよ、下手すればいい方に回るかもしれない」
ハーマイオニーはハリーの耳元で
「マルフォイは彼女に夢中だそうよ。だから彼女がマルフォイに秘密を漏らしても、それ以上は広まらないと思う」と小さく呟いた。
ハリーは微笑してレディーに手を差し出した。
「よろしくね、ハリー。レディー・エジワール…いえレディー・ランペルよ」
「こちらこそ、よろしくレディー」
握手を交わすと、まだためらいが無くならないのか、生徒の表情が硬かったが、今は気にしないことにしようと決めた。
(やったなフレッド!)
(やったなジョージ!)
((スリザリンのプリンセスが仲間入りだ!))
prev next
back