久しぶりの部屋に行き、トランクの中を整えるレディーは、背を向けて洋服を漁りながらオルガに尋ねた。
「明日の最初の授業なんだっけ?」
「闇の魔術に対する防衛術」
レディーは青い顔になり、ぎこちなくオルガに顔を向けた。互いに顔を見合わせて深いため息をつき、トランクを体重をかけながら閉じた。
「「あのピンク豚だぁ…」」
‐‐‐
闇の魔術に対する防衛術の授業前、アンブリッジが来ないので、隣の席に着くドラコと話をしていた。
「レディー、お前また新しい服を買ったのか?」
「そうよ、可愛いでしょ」
ニシシと笑うレディーの校則違反になるであろうスカートを見て言うと、紙で作られた鳥が二人の目の前を舞ってきた。
宙をヒラヒラと舞い上がり、そこにいた生徒がくぎ付けになって見ていると、飛ばした張本人の元へ炎を上げて落ちていった。
紙の鳥は黒焦げになり原形を留めていない。
それをやったのはアンブリッジだったことに気づいた。
「おはよう皆さん」
レディーは足を組んで、机にほお杖をし、悪感情を露にさせる。
ドラコに「レディー」と言われ、ようやく組んだ足を戻したが、ほお杖は変わらなかった。
アンブリッジは前の黒板へと歩き出して杖を振りながら言った。
「普通、魔法、レベル。約してO、W、Lー!通称梟と呼ばれる試験です。良く勉強すれば良い結果がでます。そして怠ければ泣くことになるのは自分です」
甲高い声がレディーのカンに障り、机に頭をガンッとぶつけた。ドラコは彼女の奇行な行いに心配になりながら声をかけた。
「レディー…大丈夫か?」
レディーはそのまま首を横に振って突っ伏したまま動かなかった。
ドラコはなんとも言えない表情で辺りを見ると、ランドールはもう机にへばりつき睡眠体制に入っていて。オルガは羽ペンを器用に回して遊んでいた。
三人のやる気の無さを実感して目線を戻すと、本が次々と運ばれてきた。
スライドするように手元に滑りこんできた本に、ガツンと頭を打たれたレディーは、「何よ」と言いながら本のタイトルを見て目を丸くした。
「防衛術の基礎?」
「何故基礎なんだ?」
ドラコとレディーが疑問を抱くと、ハーマイオニーが手を挙げて聞いた。さすが模範生、仕事が早いと、レディーは感心して心の中で拍手をしている。
「この教科書呪文を使うことが書いてありません」
「魔法を使う?ハハッ!このクラスで呪文を使うことは起こりません」
「呪文は使わないの?」
驚いたロンは口を開いた。その言葉にアンブリッジは即座に反応する。
「貴方がたは防衛呪文を安全で危険のない方法で学ぶのです」
「役にたたないでしょう?」
ハリーが言葉を出すとアンブリッジは過敏に反応している。怖すぎる。ピンクの皮を被ったトロールのようだ。
「…私も同感よ。これじゃあ役に立たないわ」
「ああ、ポッターに同意はしたくはないが、これは……」
「お黙りなさい!!!!」
ドラコとレディーが話している途中、アンブリッジが大きな声を上げたので二人は肩をびくつかせたが、二人に対して言ったものではなかった。
怒鳴られていたのはハリーポッターだった。
その言葉でペン回しをしていたオルガも、寝ていたランドールもハリーに目を向けた。
「もうたくさんです。このあと、私の部屋に来なさい・・・ふふっ」
隣でドラコがざまあみろと言っていたが、レディーは自分の目の前にある「防衛術の基礎」と書かれた教科書をただただ睨んでいた。
(ピンクの豚さん、あなた何を企んでいるのかしら)
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