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ダンスパーティが明日へと迫り、ホグワーツはますます楽し気な声で満ち溢れていた。

ドレスは何色?
あなたの買ってきたネックレス最高。
僕がリードしてあげるからね。

そんな楽しそうな声は、ドラコの耳には届いていなかった。ただ彼はひたすら彼女のことを頭に描いていた。レディーはきっと来る。その言葉を自分に言い聞かせて、ずっと信じてきた。


談話室へと足を運ぶと、数人生徒がくつろいでいる。誰も座っていなかった暖炉前のソファーへと腰を落とすと、机の上に今日の新聞が乗っている。
暇だったので新聞をひらくと、たまたま目に飛び込んできた記事に顔を青くさせ、手の力を無くしてその場に落としてしまった。


「…レディー」


そんな様子を遠目にみたランドールが近づいてその新聞を拾い上げた。記事に目を通し、新聞を握りしめ歯を食いしばった。
ドラコの隣に座り「大丈夫だ」と声をかける。



【ランペル家のルーファスが結婚】

12月24日ランペル家の中で最も偉大な魔法使いルーファスは結婚式を挙げることなった。相手は純血魔法使いエジワール家の娘で、
レディー・エジワールであることが判明し、魔法大臣は二人の結婚を祝福するとして、パーティーに出席すると示した。




「レディーは明日来るだろうか」


アロマの言ったことは、本当だったんだな。と弱々しく呟いたドラコは、暖炉の炎をじっと見つめた。
ランドールは手に持っていた新聞をその暖炉へと放り投げる。



「母からタキシードが送られてきたんだ。箱に入れられた正装。しかし相手がいなければ着る意味はない」

「レディーは来るよ」

「もちろん信じてはいる。でも」

「…」

「不安なんだ。側にいないと、僕だけがレディーを好きな気がしてきて」


ドラコが拳を握り締めた時、ランドールがドラコの頬を軽く叩いた。ペチッと小さな音が鳴る。


「俺が好きになった女は、お前を愛してるよ。悔しいくらいに。でも不安になるのもわかる。だって俺たちまだ14歳じゃないか、当たり前だ。でもこれだけは信じられるだろ?お前の気持ちは一方通行じゃない。レディーはドラコのことを愛してる」


だから帰ってくるって信じよう。と言いランドールは立ち上がった。そして叩いてごめんな、と言いながら去ろうとする彼に、ドラコはただありがとうと、胸を押さえて小さく呟くことしかできなかった。


(俺が愛した人をずっと信じてあげてほしい)


‐‐‐‐‐‐


「レディー、ついに明日だね」

「えぇ・・・新聞が回っているようだけど、ドラコは私を待っていてくれているかしら」


新聞を握りしめるレディー頭をルーファスはくしゃくしゃと撫でた。
彼を見るとニコリと笑った。


「大丈夫さ!レディーの恋人だろ?信じようぜ」

「えぇ、そうね」

「じゃあ明日のおさらいだ!」


ルーファスはレディーの部屋に置かれていたドレスを手に取りその場でクルリと回転した。


「ウエディングドレスを着た頃を見計らって、僕がレディーの控え室へ向かう。そしたら親族やらお客の大臣達が入ってくる前に式場をぶっ壊して、それに慌てている間に俺が姿くらましを使いホグワーツへ連れて行く!」

「完璧!さすがルーファス!でも疑問があるの。何故明日?別に今だって構わないんじゃ」



ルーファスはレディーの前でちっちっち、と言いながら指を横に振った。レディーは首を傾げている。


「レディー、お前は明日結婚するんだぞ?それなのに今日その花嫁がいなくなってみろ。ホグワーツに戻ってもまたすぐに連れだされるのが落ちだ」


レディーはそうかと言いながらポンと手を叩く。


「今日までの練習で疲れたろ?早く寝て明日に備えよう」

「そうね!体くたくただわ」


体をひねって骨を鳴らしながら、ケタケタと笑いレディーは応えた。
それを見て笑うルーファスに、レディーは急に黙り込み思い切ったお願いをした。



「ルーファス、私姿あらわしを覚えたい」

「…レディー」

「お願いよルーファス!私頑張るから」



レディーは手を合わせて頭を下げた。そうすればいつでも母親から離れられる。何かあった時に役に立つ。
しかし、いつも笑顔で受け答えてくれるルーファスは、今日だけは笑顔になってくれなかった。


「…レディーごめんな。それは出来ない。厳しい監視のもと行われる姿あらわしの試験に受からなければ、使用してはいけないんだ。受験資格は17歳以上。レディーはまだ14歳だ。使えたとしても、魔法省より厳しく罰せられる」

「そうなの…」


もう一度ごめんなと言い、ルーファスは先ほどまで振り回していたドレスをベッドの上に置いてレディーの頭を優しく撫でた。


「大丈夫、レディーの魔法レベルは著しく成長したし、問題ないさ」

「ありがとうルーファス」



微笑んでお礼を言い、明日は頑張ろうと二人で握手を交わした。



レディーの部屋前の廊下には人の影があった。
母親であるサリアだ。下品極まりないことに壁に耳を付け盗み聞きしていたのだ。ニヒルに笑った彼女は自室へと戻り、とある所に電話をかけていた。


受話器にチンッと音をたてて電話を終えたサリアは高らかに笑った。


「レディー、貴女の思い通りにはならないわよ。もうあの目で私を見つめさせない」



(好きになんてさせない)
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