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「必ず手紙を書くわ!」


そう言ったレディーから、まだ一通も手紙がきていない。

レディーが学校を休んでもう一週間になった。もうそろそろ帰ってくるか、それか手紙がきてもいい頃だと思っていたが音沙汰なく心配になり、ついにペンを持った。



レディーへ、元気か?
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早く来ないと授業に遅れるぞ
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手紙が一通もきていないが
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お前の梟は迷子にでも
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なったのか?
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          D.M



「よし。頼むぞ」


梟に手紙を預け、窓を開ける。自分の梟は羽を大きく広げ空へと飛んで行った。

やけに暗く鈍よりとした雲を見て、妙に嫌な気分になったが、気のせいだろうと窓を閉めた。



それからまた一週間がたったが、レディーからはまだ手紙がこない。ずっと待っててやるとは言ったが、約束をした手紙が送られてこないところが引っかかった。
まして聞いている家庭のことを思うと冷や汗が出てくる。

談話室のソファーで思い悩んでいると肩に手を置かれ、声をかけられた。


「よぉドラコ」

「なんだランドールか」



僕がそう言うと、手をちょいちょいと振り、隣を空けろと手で合図してきた。仕方なく横をあけるために移動すると、遠慮もなく座ってくる。
しかしいつものようにヘラヘラしていなかった。眉を寄せ、まるで同情してますといった表情だ。



「レディーからまだ手紙こないのか?」

「あぁ。何かあったのかと思ってはいるんだが、連絡の取りようがない…」

「ドラコお前頭を使えよ、帰ったのはレディーだけだろ?妹のアロマは学校にいるじゃないか」



どうしたか聞きに行けよと続け、ランドールは手を動かした。


「考えたさ、ただ…」

「ただ?」


頭を抱えて悩む僕を、ランドールは不思議そうに覗いた。


「レディーの妹、アロマ・エジワールはポッターのいるグリフィンドールだろ…」


ランドールに冷めた目で見られたが気にしない。それだけポッターが嫌いだし、死ぬほど行きにくいんだ。汚れた血もいるしどんな面倒ごとに会うかわかったもんじゃない。


「はー!全くお前ってやつは。わかったよじゃあオルガと二人で行ってくるから待ってろよ」



ランドールはニカッと歯を出して笑い、近くにいたスターシップの腕を引っ張り談話室から出て行った。
あいつあんなやつだったか?とも思ったが、ここはランドールに任せるしかないと思い再びソファで一人物思いにふけた。



‐‐‐‐‐‐‐‐

グリフィンドールの寮の扉主である太ったレディがある生徒を睨んでいた。
スリザリンの二人が腕を組んでドアの前に立っていたのだ。


「なぁ頼むよ“細身の”レディ。アロマ・エジワール呼んで」

「私の歌をもう一度聞いたらよ!」


ランドールとオルガはその声に思わず耳を塞いだ。太ったレディのキーンとした声が階段に響く。


「どうすんのよランドール!こんなの聞き続けたら耳が聞こえなくなるわ!」

「こういうのは辛抱が大切、オルガ我慢だ!」

「耳の穴に指突っ込んでる人なんかに言われたくないわ!」

「うるせえ!もう30分もこうなんだぞ、耳だってイかれるよ!」


二人がもうダメだと思っていると、寮の扉が内側から開いた。丸い眼鏡をかけている男の子。ハリーだ。
寮内にもその声が聞こえていたらしく心配になって覗きに来たらしい。



「あの、誰かに用?」

「ハリーポッター!さすが救世主」

「よぉハリーお前ってなんて最高な奴なんだ、握手しようぜ」


制服をみてスリザリン生とわかったとき嫌な気がしたが、あまりにもサバサバしている二人にハリーは後ずさりをした。ランドールが手を差し出しているが眉を寄せて否定している。



「で、スリザリンの二人が何の用?」

「そうよ!!ねぇハリー、アロマを呼んでくれない?」

「アロマを?わかった、連れてくるよ」

「サンキュー、ハリー」



スリザリン生もお礼を言うのか、とハリーは感心しながら、グリフィンドール内にアロマを捜しにいった。


---



15分が経ってハリーは女の子の手を引いてやってきた。ツインテールをした髪型。間違いなくアロマだ。まるで原宿と言われる貫禄ここに有り。


「アロマ!あぁやっと会えたわ!」

「オルガさん?」


アロマはオルガを見て驚いたが笑顔を向けた。そんなアロマの手を握り締め真剣な表情をして尋ねる。


「ねぇアロマ、レディーに何が起こっているかわかる?家に帰ったままもう二週間も帰ってこないの」


目を見開いたアロマはオルガから目を背けた。オルガは不思議に思いまゆをひそめている。


「すみません、言えないんです」

「どうしてだよ」


ランドールは腰に手を当てアロマに反発した。そんなランドールにオルガは「落ち着きなさい」と言い、アロマの手を再び固く握り締めた。


「アロマ、お願いよ」


もともと素直で純粋なアロマは、真剣な目をしたオルガから心を背けることはできなく、ふるふると震えたあとに小さな声で「マルフォイさんには言わないでくれますか?」と呟いた。

ランドールとオルガはその言葉の意味がわからず驚き、互いの顔を見合わせた。頷き合い、再びアロマへと視線を戻し


「わかったわ、約束する」


と言い小指を差し出た。
「指切り」よと言うオルガにアロマは、少し安心したような顔をし話を進める。


「レディーは…結婚するんです。純血のスリザリンの家の人と。だからもうホグワーツへは戻ってこない」


一度言葉を失った二人は一度固まったあと、わなわなと震えていた。思わずオルガがアロマの肩を掴み揺さぶった。


「どういうこと!?レディーにはマルフォイがいるのよ?それにホグワーツへもう来ないって、私はレディーからそんなこと聞いてないわ!私が信用できなくなっちゃったの!?」


キッパリと言ったオルガに便乗するようにランドールも口を開いた。


「レディーはその結婚望んでるのか!?」


二人の質問にアロマは首を横にブンブンと振り否定した。


「違います、レディーはオルガさんを誰よりも信頼しているし、頼ってる。それにレディーは結婚なんか望んでいない」

「じゃあなんで…」

「今回の騒動、事の発端は私たちのママの仕業なんですママはレディーがエジワールの名を名乗るのが嫌なんです。スリザリンに生まれてきたレディーを今でも怨んでる。
手紙はたぶんレディーの手に渡る前に、ママが棄てているから来ないんだと思います」



アロマの顔は酷く暗かった。まるでスリザリンの地下路を歩いている時のように表情は真っ暗だ。オルガはその場に崩れ、ランドールも固まったまま動かない。酷く絶望に溢れていた。


「ドラコになんて言えばいいんだよ」


壁にもたれかかり、手で顔を覆うランドールは、深い深いため息を吐き捨てた。
レディーとドラコ、二人を引き離したかったランドールは、いつのまにか二人が離れていくことが嫌になっていたのだ。


(知らない奴に好きな子を貰われるくらいなら、友人に幸せにしてもらいたい)


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