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「かねてより、トライ・ウィザード・トーナメントに伴い。舞踏会を行うのが、伝統とされています」


スリザリンの寮の生徒が男女に別れてマクゴナガルの話を聞く。
真ん中には蓄音機があり、フィルチが今か今かと鳴らすタイミングを見計らっている。


「クリスマスイブの夜、お客様とともに大広間で楽しい夜を羽目を外さず過ごすのです」


教室から男女共にフゥーと声が上がる。グリフィンドールではなかった反応にマクゴナガルは困惑しながらも「お行儀よく!」と付け足した。


「あなた達は気品はありますが時折悪どいことをしたがります、そんなことが決してないように。スリザリンの名を貶してはいけません」


生徒が静かになった。スリザリンは他の寮よりも縄張り意識や団結力はある。静かになるときはケジメがあった。

マクゴナガルもそんな生徒たちの態度に感心し、両手を広げながら言った。


「誰か見本に踊ってくれる人はいませんか?」


シラけた空間が漂う。誰も立候補しないと感じたマクゴナガルは仕方がないと、近くに座っていたランドールを指名しようとした時だった。

ドラコが立ち上がったのだ。

生徒は皆驚いた。スカしたような顔をしながら、女子の方へと歩き、一人の生徒の前で立ち止まった。


「何のつもりかしら?」


そう答えたのはレディー・エジワール。彼女の前でドラコは立ち止まっていたのだ。

周りの生徒がザワつき始める。
二人が喧嘩をしていたのは寮内でもっぱらの噂だったからだ。

レディーは不敵に笑いドラコへと顔を上げる。ドラコは余裕を持って笑いながら、そっと手を差し出した。



「仲直りしようじゃないか」

「私ダンスには厳しいわよ」


レディーがドラコの手を取った瞬間拍手が起こった。時折口笛も混ざっている。
二人は中心へと歩み、体の向きを合わせた。

マクゴナガルが今よ、とフィルチに合図をし、蓄音機から音が流れた。


ドラコがレディーの腰に手を当て、音に合わせてステップを踏んだ。


マクゴナガルは思わずうっとりとしたため息を吐いていた。
女の子も両手を合わせて「素敵…」と呟いている。


そう、本当に凄かったのだ。
二人は名家の出からか、ダンスを嗜んでおり動きも、リズムも完璧だった。

音に合わせてドラコがレディーを持ち上げたときはもっと大きな歓声が上がった。



「仲直りは出来そうか?」

「音楽が終わったら返事をするわ」



そう言ったレディーがとても嬉しそうに微笑むと、音楽がゆっくりと終わっていく。
マクゴナガルは拍手をして二人を讃えた。


「素晴らしいですMr.マルフォイにMs.エジワール。周りに舞踏会の光景が浮かびましたよ。二人にはグリフィンドールの生徒たちを指導して頂きたいものです。全く踊ろうとしないの」

「先生勘弁してくださいよ、奴ら覚えるのに千年はかかる」


ドラコがそう言うと、「それもそうでしたわね」と非常に薄情なことを言いながら二人を席に戻した。


「さて皆さんも、舞踏会のペアで無くて結構ですので、今ペアを組んで練習をしましょう!わからない所はMr.マルフォイとMs.エジワールに聞きなさい」



そう告げられ結局その後二人は指導の方に周り、踊る時間はなかった。


---


授業が終わり、寮へ帰ろうとした時だった。レディーはオルガに肩を掴まれ耳打ちをされた。


「行って来なさいよ」


視線の先にはドラコがいた。
待ってた。と言わんばかりにこちらを向いている。オルガに背中を押され、二人は無言のまま歩んでいった。



「全く世話の焼ける」


オルガがそう呟き寮へ戻ろうとした時だった。彼女の前にはランドールがいたのだ。


「ハァイMr.惚れ薬」

「最悪のあだ名」

「自業自得ね。寮へ戻りたいの、そこを退いてくれるかしら?」


オルガがランドールの横を通り過ぎようとした時、ランドールはお辞儀をして手を差し出した。


「ダンスパーティ一緒にどうだ?」

「気でも狂った?私はレディーじゃないわよ」

「知ってるさ、でもどうせ相手がいないんだろ?俺もダンスならできる。ドラコ程じゃないが下手くそな奴と組むよりマシだと思うよ」

「慈悲深いオルガ様がポリジュース薬でも作っといてやるわ」

「レディーになるのか!?それ最高だよ一生そのままでいて」


彼は物凄い笑顔で頷いた。なんて名案なんだと言わんばかりに目を輝かせている。

パンジーが後からノットに聞いた話だが、次の時間ランドールは授業に現れなかったそうだ。


(あぁ凄い紫色に腫れてたよ。もちろん顔が)


---


ドラコとレディーは湖の岸辺まで来ていた。よくここでビクトール・クラムが自主練習をして女の子たちがそれを追いかけていると聞いたことがあるが、

「噂通り」

そう呟いたレディーの目の前をファンレターを持った女の子の軍団が追いかけていく。



「レディー」

「何よ」


そんな光景はドラコにはまるで見えていないようで、岩場に座りながらレディーの手を握りしめた。


「僕とのダンスは良かったろ?」

「ずいぶんと自信満々ね」

「当たり前だ。小さい頃から習ってたからな」

「そうね、最高だったわ。初めて息の合う人とダンスをした」



レディーが微笑んで湖を見つめた。ドラコは息を飲んでレディーの発言を待つ。


「仲直りね」


ドラコが微笑んでレディーを抱きしめた。耳元で「ごめん」と声が聞こえる。
レディーも「私こそムキになってごめんなさい」そう言って抱きしめ返した。



「ところでドラコ、ダンスパーティに誘われていない哀れな女の子が目の前にいるんだけど」



向き合った瞬間早口で言ったレディーにドラコは思わず笑った。本人はいたって真剣だったようで眉間にシワを寄せて、笑ったドラコを睨んでいる。



「ダンスパーティに好きな女をまだ誘えていない情けない男が言ってたよ」

「なんて?」

「相手はレディー・エジワールじゃなきゃダメだって」



二人はまた笑った。岸辺にはもう誰もいない。

二人だけの幸せな空間だったのだ。



(僕と踊ってくれるか?)
(もちろんよ)

BGM by【Neville'swaltz】

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