ハリポタ短編 | ナノ
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シンデレラに人魚姫、眠り姫に白雪姫。たくさんのプリンセスの中で、私は髪長姫のラプンツェルが大好きなの。


鏡を見てため息をついた。私の髪の毛は短い。短いと言っても、ボブ程度の長さはある。でも、憧れのラプンツェルには程遠い。

髪を長くすることもできない、乾かすのが大変だし、あんなに綺麗に髪を維持できない。
思わず自分の髪の毛を触って、またため息をついた。


「はぁぁ…」

「おいなまえ!!!」

「うわぁぁぁ!何!」



後ろから思い切り声をかけられ談話室のソファから落下した。そんな姿を見て、声をかけてきた人は大笑いしている。


「アハハ!凄いねなまえ、芸人みたいだ」

「フレッド!!急に声掛けるのやめて!」


ごめんごめんと言いながら、全く反省の色が伺えない。グリフィンドールに寮が決まってからというもの、ウィーズリー家の双子にやたら絡まれているがとくにフレッドの方が凄かった。
朝から晩まで何かにつけちょっかいを出してくる。


「また鏡見てたのか?ナルシスト?」

「違うわよ!髪の毛見てただけ!」

「髪の毛?」

「そう!私ラプンツェルに憧れてるのよ」


手鏡を見て目を輝かせた。ラプンツェル?と首を傾げるフレッドに童話の表紙を見せてやる。塔のてっぺんから長い髪の毛が舞い降り、それが男の手の中にあるような表紙だ。


「髪長ー!!!洗うの大変そうだね」


ふざけたように言うフレッドの手から本を奪い手の中に収めると、フレッドは笑いながらまたも、ごめんごめんと軽く謝った。


「もう!フレッドにプリンセスの本の魅力はわからないわよ!!」

「怒るなよなまえ、わかるよ僕も好きだからねプリンセス」

「え!?」


なまえの目が輝いた。まさか悪戯でホグワーツの教員の手を焼いているフレッドがプリンセスを好きだとは知らなかった。

嬉しくなって童話を何冊も差し出しフレッドの手に乗せた。


「ねぇ!!フレッドはどのプリンセスが好き?」

「いや、え、あのさなまえ…」

「シンデレラ?王道よね〜。あ、それとも人魚姫?」


興奮するなまえはフレッドの言うことなど何も聞かずに童話を語り出した。助けてくれと言うように、フレッドは談話室にいる生徒に目を向けたが、誰もが目を逸らした後に談話室から出て行ってしまった。
ジョージなんかニヤけながら、遠くで「頑張れよ相棒」と言っている。


「う、裏切りもの…」

「え何?眠り姫?フレッドは眠り姫が好きなの!」

「ーー!なまえ!違うよ!ごめん!本当はプリンセスなんか一つも興味無いし全然知らないんだ!!」


フレッドは早口になりながらも一気に言い放った。まずいと思い顔を上げると、なまえは酷くショックを受けた顔をしている。


「…あ……そう、か。ごめん私ったら早とちりして…」


なまえは本を抱えてゆっくりと立ち上がった。フレッドはやりきれない思いを抱え、なまえの腕を掴むと、抱えていた本がバラバラと音を立てて床に落ちていった。


「何するのよフレッド!謝ったじゃない!これ以上恥ずかしい思いさせないで!」

「なまえごめん、僕がいけなかったんだプリンセスが好きだなんて紛らわしいこと言って」

「貴方は気を使ってくれたんでしょう?わかってるわ大丈夫よ。でも、もう腕を離して頂戴。ちょっと今は…」



貴方と話すのが辛い。

消え入りそうな声で呟いた言葉は、フレッドに突き刺さるように響いた。うつむくなまえに、フレッドはもう本当のことを言うしかないと決心を固め、なまえの肩を掴んで自分の方へと向かせた。



「気を使ったわけじゃないよ」

「フレッドもう気にしないで、私嬉しくなって興奮しちゃっただけだから」

「あーー!もう!いいかなまえ、僕が好きなプリンセスは君さ!」


言ってしまった。というように頬を赤くしたフレッドは、なまえの肩を掴んだまま顔を下に向けた。直視できないのだ。
なまえはどういうことだと言わんばかりに目が点になっている。


「フ、フレッド、私はプリンセスではないわ」

「…僕にとってのプリンセスって事にしてくれ。意味わかるか?」

「なに、金づるってこと?」


プリンセスはお金持ちだからね。と付け加えるなまえに、フレッドは顔を上げて肩を揺さぶった。


「童話に出てくる王子はプリンセスを金づるだと思っていたかなまえ!!違うだろ!好きだから結婚したんだろ!なまえの脳みそはどうなってるんだ!」


フレッドは息を切らしたようでゼーゼー言っている。なまえは意味を理解してきたようで顔を赤く染めた。


「…キザすぎやしない?」

「誤解を解くにはこう言うしかないだろ…僕だって言いたくなかったよ」

「あー、ウィーズリー王子」


なまえが制服のスカートを両手で持ち、プリンセスのように横に広げた。フレッドは何かと思い、なまえの肩から手を離した。


「私をプリンセスにしてくれるの?」

「なってくれるなら、王子にでも何でもなるよ」


なまえの手を掴み、手の甲にキスを落とした。赤くなるなまえはフレッドに抱きつき、フレッドもそれを受け止めてその場で2回ほど回転して見せた。


「嬉しいよフレッド…」

「僕もだよなまえ。キザな告白だったけどね」

「ふふ、本当ね。でも嬉しい!」


なまえが笑顔になると、フレッドも安心したように微笑んだ。体重の軽いなまえを難なく持ち上げる。
腕をゆっくり降ろすと、二人はどちらからでもなく自然とキスを交わしていた。


「いつから?」

「ん?」

「いつから私を好きだったの?」

「…さぁね」

「えー!ずるいよフレッド!」

「じゃあなまえは?」

「んー。ナイショよ!」

「なまえもずるいじゃないか!」



談話室に二人の笑い声が響いた。

なまえは憧れの髪長姫にはなれなかったが、プリンセスのように素敵な恋をすることは出来たのだ。


(一目見たときから好きだったよ)



・髪長姫には程遠い



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