小鳥のさえずり、暖かな日差し、いい香りのするコーヒー、隣を触れば愛おしい妻…がいない。
「…!!」
ベッドはもぬけの殻だ。代わりにものすごい笑顔の屋敷しもべのプルートが「おはようございますドラコ様」と言ってコーヒーを運んできた。思わず眉間にしわを寄せ、「おい」と呼び止める。
「レディーは」
「あぁ、レディー様ならランニングへ行かれましたよ?」
「はぁぁ?」
「なんでももう日がないとか」
「なんのだ」
「やですよぉドラコ様、決まってるじゃないですか結婚式ですよ結婚式。ダイエットでしょうきっと」
「…必要ないだろ…」
ドラコが頭を抱えている頃、ボクサーの朝練のように汗を流しながらレディーは走っていた。その様子をみた早朝散歩の老人が恐怖のあまり呟いた。「まるで般若のような顔をしていた」と。
「結婚式まであと2ヶ月…!!!!!!」
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