ねぇルーファス、お元気ですか?と、死んでしまった人に言うのはおかしいかもしれないけど、きっと貴方は天国で笑顔でいてくれてるよね?
あれから2ヶ月の月日が流れました。城は先生や生徒、それから多くの卒業生のおかげで元に戻りました。今まで通りの校舎です。でも所々戦いの跡があるの。ワザとなんですって。
こうして戦争があったことを忘れないように。未来の生徒につないでいけるようにね。
それと、少しだけ髪を切りました。ほんの少しよ。40センチくらい。オルガに切ってもらったの、未来の美容師だからね。みんなに内緒で切ったんだけど、切った後はランドールには散々叫ばれたわ(煩いから軽く引っ叩いた)。オルガは切るのに勇気がいるって言って2時間はハサミと睨めっこしてた。
一番最初に会ったのはもちろんドラコ。とっても似合うって言って髪を撫でてくれた。少し名残惜しい気もするけど、後悔はしてない。髪はまた伸びるしね。
なんで髪を切ったかって?再生のためよ。自分自身のね。
カロンは相変わらず元気。毎日お屋敷を走り回っているわ。ルーファスの屋敷に人がいなくなったから、今はマルフォイ邸にいるの。でも時々寂しくなって、ランペル邸のお庭を掃除している。庭に植えたバラの花を見ると貴方を思いだすそうよ。最初意味がわからなかったんだけど、貴方の名前を思い出してわかったの。ルーファスって、ラテン語で赤を意味するそうね。
今のランペル邸の庭には、赤いバラがたくさん咲いているわ。
そうそう大切なことを言い忘れるところだった。ルーファスが愛していたアシュレイさんが私に会いに来たの。1ヶ月くらい前、ホグワーツの建物を直していた時だった。私は庭の手入れ担当で、花壇を直していたわ
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「あの、レディー・エジワールという女生徒はどこに?」
「おめぇさんは?」
ホグワーツへ渡る橋で門番をしていたハグリッドが尋ねた。初めて見る顔だ、べっぴんさんが来たなぁなんて頭をかきながら、朗らかに笑う。
「アシュレイと言います。アシュレイ・ナイマン。魔法法執行部の者です」
そのとたんハグリッドの目が鋭くなった。魔法省の人間が何のようだと、近くに立てかけてあった斧を持って歩み寄る。
誤解です誤解です。と、アシュレイは必死に手を振る。ハグリッドはそれでも疑いの眼差しをやめなかった。
「レディー・エジワールに話があるのです、どうか会わせてください。敷地内に入ろうとは思わない。どうかここにレディーを…。壊れた校舎を直すのに忙しいのはわかっています…少しだけでも」
「…いいだろう。何かしようとしたらすぐにこの斧が飛んで行くぞ。それと、2人だけで合わせることは出来ない。もう1人つけさせてもらう」
「構いません。ありがとうございます」
そう言ってハグリッドは門番を近くにいたフリットウィック先生に任せてレディーを呼びに行った。アシュレイは腹部に手を当て、レディーが来るのを待ちわびていた。
15分ほど経って、ハグリッドはレディーを連れて来た。お供はもちろんドラコだ。始め近くにいたロン、ハーマイオニー辺りを連れて行こうとしたのだが、は?グリフィンドールが?冗談じゃない!と、言いながらドラコがついて来たのだ。
レディーは呆れながらもそんなドラコを可愛い奴だなんて思い少し笑った。
「あぁレディー!あえてよかった」
「あなたはルーファスの…」
「初めまして…ではないわよね。私の体はどうだったかしら?」
ドラコは訳がわからないような表情で2人を見た。無理もない、ドラコは知らないのだ。6年生の時、魔法省に入り込もうとしてポリジュース薬を使ったのがこのアシュレイだったことを。
「あの時は本当にごめんなさい」
「そんなことはいいのよ気にしないで。役に立てたなら良かった」
「ルーファスの事も本当に残念で…あなたを好きだったから…残念で、残念で…」
「…」
「…」
「レディー、実はね」
「…?」
アシュレイがレディーの手を掴んで自身の腹部に手を当てさせた。まさかと思ったドラコが目を見開かせる。レディーの瞳からは涙が溢れた。アシュレイの瞳も同じように。
「赤ちゃん…いるのよ……ルーファスの子どもが」
「…うそみたい…」
こんなことって…と、レディーはアシュレイを抱きしめた。大好きな義兄の残していったもの。愛おしい命が今この人の中にいるのだ。ルーファスへの涙は流し切った気でいたが、また溢れ出てきた。
「おめでとうルーファス…アシュレイ…」
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ねぇちゃんと聞いてる?あなたの残していったものが、今確実に愛した人の中にあるのよ?凄いことよね。奇跡みたいで、私は今とても幸せ。
ずっと守っていくわ。だって私お腹の子の叔母になるんだもの。
レディーの瞳から涙がまた溢れた。ランペル家の墓の前で、備えた五本のバラの花に涙が零れおちる。遠くから「レディー」と、名前を呼ぶ声が聞こえる。私の愛しい人の声だと、後ろを振り向いた。
「ドラコ」
「いくぞ。もうそろそろ時間だ」
「ええ、すぐいく」
「あぁ、バラを添えたのか」
「そうよ、綺麗でしょ?なんたってカロンが育てたバラだからね」
「…五本?何か意味が?」
「もちろん」
レディーは立ち上がった。最後に優しく微笑んで、ルーファスに行ってきますと小さく手を振る。
私は今日、ホグワーツを卒業する。
(5本のバラの花言葉はね)
「あなたに出会えて本当によかった」
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建て直った校舎。あまり変わらない。殆ど今まで通りだ。でも今日だけは違う、厳かで、どこか煌びやか。
ホグワーツの卒業式なのだ。
どこの寮も先輩の卒業に涙する後輩や、友達と離れることが嫌で卒業したくないと言う卒業生。就職って何だとぼやくやつ。様々だが、スリザリンの寮だけは他の寮とは違った。性格が悪い奴が多いから雰囲気が悪い、というわけではない。オルガが大騒ぎをしていたからだ。
「レディーーー!!!!!」
誰もが耳をふさいだ。それほどにうるさかったのだ。ランドールがそんなオルガにソファーから足を引っ掛ける。思い切り転倒したオルガはランドールの胸ぐらを掴んだ。
「何するのよこのボケナス」
「こっちセリフだよ」
ランドールは舌を出してオルガを煽った。今にも火を吐きそうなオルガはランドールへ頭突きを食らわせる。いてぇぇと叫ぶランドール等気にもせず、ドラコはネクタイを締めながらなかなか姿が見えない恋人はどうしたのかオルガに尋ねた。
「珍しいなスターシップ。レディーがどうしたんだ、まだ準備をしているのか?」
「あぁドラコ!レディーを見てないの!?まったくあの子ったらどこへ行ったのかしら」
「は?いなくなったのか?」
「そう!お手洗いに行ってる間に部屋からいなくなってたのよ!もう卒業式が始まるっていうのに!!」
「…」
全くどうするのよもう1時間も無いのよ!?と怒るオルガの横を通り抜け、ドラコはローブを着て寮から出て行ってしまった。
「あ!ちょっとマルフォイ!」
「放っておけよ。どうせいる場所わかってるんだろ?」
「…天文台…?」
「まーだろうな」
「…」
「オルガもわかってたんだろ。それでも迎えに行かなかったのは初めからドラコに行かせようと思ってたからだ」
「…」
「迎えにいくのオルガでもいいと思うぜ?まぁそこでドラコに行かせようとするのはさすがオルガって感じだけどさ。だからってあそこまで露骨に叫ばなくても」
「…」
あんた時々鋭いから嫌い。そう言ってオルガはランドールをソファーの向こうへ蹴り倒した。
(何するんだよ!!!)
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