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ベラトリックスを倒したレディーに杖を向けていた死喰い人が、他の生徒へと杖を向けた。それに気づいたレディーは呪文で杖を弾く。

「さすがレディー」そうオルガは顔を煤で汚しながら微笑んだ。
そんなオルガを見る者がいた。


「…」


レディーがオルガに背を向けた瞬間だった、死喰い人はオルガに目をつけていたのだ。

レディーとオルガが仲がいいことなど、長く友達をやっていなくても見た目でわかることだろう。レディーの側にいたオルガは、レディーの命を狙うのにはうってつけの相手だった。


「インペリオ」


オルガが膝から崩れ落ちた。死喰い人はオルガに服従の呪文を使ったのだ。それに気づくことのなかったレディーとランドールは突然体を床に落としたオルガに駆け寄った。



「「オルガ!!」」


レディーが体に触れた瞬間、オルガは足元に落ちていたガラスの破片を持ちレディーに襲いかかった。ランドールが間に手を入れ、レディーは後ろに尻餅をついただけで済んだが、ランドールの腕からは血が滴っている。

信じられない思いがこみ上げ、目を見開いてオルガを見つめた。


ランドールがオルガの手元を蹴飛ばし、ガラスを飛ばしたが、オルガは立ち上がり杖を持ったまま校舎の奥へと走って行ってしまった。


「オルガ!!!」


ランドールは叫んだ。レディーは信じることが出来なかった。そして、頭が働かなかった。生まれて初めて親友に手を挙げられたのだ。まして彼女は私を殺す気だった。死の呪文などではなく、傷をつけ、痛みを持ったままで。


ランドールがレディー!と声をあげた。その言葉でようやく正気に戻れたのだ。オルガは服従の呪文を掛けられたと。



「ランドール追いかけましょう!」

「あぁもちろん!」

「まって、その前に腕が!!」

「後でいいよこんなの!」



行こう!そう行ってランドールはレディーの手を引いた。オルガがどこへ行ったかなどわからないが、レディーを殺せと服従されているはずだ、そう遠くへは行ってないだろう。

死喰い人がそこら中にいるかと思ったら、もうかなり数が減っているのだろう、廊下はホコリが舞っているだけで人がいない。ヴォルデモートとハリーもここにはいなかった。

手を引くランドールの腕からは血が溢れている。ガラスでエグられたのだ、痛くないわけがない。レディーは走りながら「エピスキー(癒えよ)」と呪文を唱えた。みるみるうちに傷は塞がっていく。



「ありがとう」

「…ごめん」



お礼を言うランドールにレディーは涙が溢れた。彼は前を向いていて表情は見えないが、代わりに傷をつけさせてしまった悲しさと申し訳なさに胸がいっぱいになっていた。



「ごめんランドール…」

「レディーのせいでも、オルガのせいでもないよ。それにドラコとの約束を果たしてるだけさ」



ランドールがそう言ってくれた瞬間だった、またガラスの破片が鉄砲のように飛んできたのだ。レディーは保護呪文でその破片を粉々にした。呪文の先にはオルガがいる。

目に光がない、操り人形の状態の彼女はレディーに再び襲いかかった。



「お願い目を覚ましてオルガ!!」



二対一でオルガを止める。オルガは攻撃呪文だがこっちから攻撃呪文など出来るわけがない。保護呪文で相殺するだけで精一杯だった。

オルガは数歩後ろに下がり、レディー達の真上の天井に向けて杖を構えた。何をする気だと思えば、彼女はただでさえ戦いでボロボロになっている校舎に向かって破壊の呪文を唱えたのだ。



「レダクト」



校舎のコンクリートが弾け、まるでスローモーションのようにレディーとランドールの頭上へと降り注いだ。

そして、同時に服従の呪文が切れたオルガが見えた。死喰い人の魔法が切れたのだ。
オルガは呪文が切れた途端に目を見開かせ、「ダメー」と言いながらこちらに走ってくる。

もう杖を振る暇もない。こんな物理的なものに殺されるなんて思いもしなかった。


「レディー!!ランドール!!」


遠くからドラコの声が聞こえる気がする。最後にもう一度だけ会いたかった。ゴメンねも、もう言えない。


そう思っていた。


だが痛みが走ったのは体ではなく、背中だけだった。人の手によって背中が思い切り押され、その場から弾き出されたのだ。

私の上には硬いコンクリートも、鋭利なガラスも落ちて来なかった。


何が起きたのかと体を起こす。目の前にコンクリートが落ちたことは間違いない。隣にはオルガが立っていた。全身を震えさせ、手を口元にやり、涙を孕み大声で叫んだのだ。



「ランドール!!!!!!!」



え?嘘でしょ…?


目の前には捲き上る砂埃、そしてガラスの破片とコンクリートの山。泣き叫ぶオルガ。


そして駆け寄ってきたのはランドールではなく酷く焦った表情のドラコだった。



---


様子を見ながら校舎へ入り、死喰い人があまりに少なくなっていて驚いた。殆どが大広間で戦っているようで廊下には殆ど人がいない。
レディーはどこかと探すが、どこにもいない。
自分を味方だと思っている死喰い人が、人気のない廊下で僕へと駆け寄ってきた。



「ベラトリックス様が殺されて」

「なに」

「でも大丈夫ですよ、レディー・エジワールは必ず殺します。先ほど私の服従の呪文で1人の友人を操りました、じきに死ぬでしょう」

「なんだと…」



ドラコは死喰い人の喉仏に杖を突きつけた。ヒィ!と叫ぶ死喰い人にドラコはさらに強く突きつける。


「操ったのは男か」

「いえ、、女の方です、黒髪で…レディー・エジワールの近くにいた…」

「お前は僕が殺してやりたいところだが、ここで気を失ってろ、そしてアズカバンへ行くがいい」

「待ってくださいドラコ様…それは…」

「ステューピファイ」


男の死喰い人はそのまま床に倒れた。最悪の展開だ。ランドールも相手がスターシップじゃ手が出せない、レディーなんてもってのほかだ…。



「くそ!!」



大急ぎで校舎を走った。そしてようやく見つけたのだ。ブロンドの髪が揺れるのを、でもそれは最悪な場面だった。スターシップは天井に呪文を放ち、気付いた時には天井のコンクリートが落ちている瞬間。


「レディー!!ランドール!!」


ランドールが僕へと目を向けた。そして微笑みながらゴメンなと言い、レディーの体を思い切り押していた。そこから勢いよく弾かれたレディーは床に叩きつけられ、僕がレディーの元へたどり着く前には…



もうランドールの上にコンクリートが落ち終わった後だったのだ。



(脳裏に笑ってゴメンなと言うランドールの表情が浮かぶ)

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