ムーディの合図で外に出ると、いたのはドラゴン二体。それにバイクも置いてある。特にドラゴンなんか礼儀正しく道路のど真ん中に座り込んでいる。
「このドラゴンたちは一体…」
レディーが眉間にシワをよせ指を指しているとロンが後ろから声をかけた。
「その一頭はレディーのドラゴンだよ。女の子なんだ。名前はねジャスミン」
「ちょっと待ってロン。なんで私のドラゴンなわけ?」
レディーは勢いの余りロンの首を閉めて揺らすと、ルーピンが落ち着けとでもいうようにレディーの腕をとった。
「レディー、隠れ家までは二人一組で行動するつもりだ。でも残念なことに組む相手がいないんだ」
「ムーディ先生がいるじゃない!」
「悪いなレディー」
ムーディがマンダンガスを指差し、俺はこいつの見張りだと言って謝った。つまりはレディーは組む相手がいないのだ。
「何かあったら困るからドラゴンに乗っていってもらうわけさ。魔法使い一人分よりも強いからね。それにキミ箒を持ってきてないだろ?」
首を放してもらったロンは、ゲホゲホと咳をしながらドラゴンを指さした。ビルの趣味なのだろうかフラーなのかはわからないがドラゴンには可愛らしいリボンが付いている。
「このドラゴンはビルが連れてきたんだ。強いよ!口から火を噴くんだ。戦力になる」
「私が一人で行動するのと、ドラゴンが強いってことと、女の子ってことはよくわかったわ。で?隠れ家ってどこ?」
腰に手を当てて眉を寄せるレディーに、ハリーは割り込むように話しに入ってきた。
「新しいロンの家があるところさ、場所はわかる?」
首を横に振るレディーに、あー…どうしようか?とハリーとロンが顔を合わせると、ルーピンが南の空をさした。
「レディー、南々東の方角に約35キロだ」
「オッケーよ」
「「それでわかるの!?」」
「無駄話しが多いぞ!時間がない。みな、準備にかかれ!!」
ムーディのその一言でみな我に返ったのか、ハリーがハグリットのバイクに乗ったりとバタバタと動き始めた。
レディーも同様ドラゴンの前に立ち「よろしくねジャスミン」と言って乗っかる。そしてムーディが杖をドンと突くと、皆一斉に南々東の空へと飛び立った。
ドラゴンは割と乗り心地がいい。箒よりも好きになれそうだとレディーは感じていた。いつ襲われるかもわからないのに心はなぜか穏やかだ。
暫くはハリーとハグリットのバイクの隣を飛んでいた。目の前の黒い雲がチカチカしていたので何かと思い突っ込んでみると、そこは死喰い人たちとの空中戦場になっていた。
ハリーは恐怖心に駆られていた。ハグリットは直ぐに逃げ出し、雲の外へと抜けてしまった。
「…!」
周りから攻撃をされるが全て無言呪文で跳ね返す。ジャスミンに当たったらおしまいだ。
しかしさすがドラゴンといった感じで、あたり一面に炎を撒き散らして死喰い人を攻撃した。
「ポッター!!」
死喰い人の一人が襲いかかってきた。案の定私をハリーだと思っているらしくしつこく追いかけてくる。
しばらく逃げていると、突然攻撃がやんだ。誰も私を追いかけなくなったのだ。
「…まさか……」
本物がどのハリーかがバレた?
まずいことになった。ハリーがばれたらおしまいだ。しかしなぜ今日ハリーが移動する情報が死喰い人に漏れたのだろう。
「今は隠れ家へ行きましょう…」
とにかくみんなと集合しなくては。姿あらわしを使いたかったが、ジャスミンがバラけては困るので残りの道を飛んで行くことに決めた。
「怖かったねジャスミン」
ドラゴンが返事をするように唸った。ジャスミンに捕まる手がみるみるうちに元の手に戻っていく。ポリジュース薬の効果が切れたようだ。
ハリーになることで指輪を外していたので、すぐに付ける。
シルバーの指輪が月に反射して綺麗だ。
(隠れ家まであと20キロ)
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