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カッスルクームの町の夜明け、レディーはいつも履いている靴を止め、スニーカーを履いた。長く伸びた美しいブロンドの髪をポニーテールにして縛り、左手には指輪、首元にはバラのネックレス。深呼吸をして、旅立つ空と生まれた町にさよならを告げ家を後にした。


「レディー…どこに行くの?」


母が家から出てきた。起こさないように出てきたつもりだが、ばれてしまった。母と仲直りをしてからもう一年経つ。今までの蟠りが嘘のように今の母との関係は良好だった。
母はカーディガンを肩に掛け、眉尻を下げて「行かないで」とつぶやいた。
きっと今でも私を父親であるロデオと重ねている。私が旅立てば、帰ってきてくれなくなると。


「お母様ごめんなさい。自分自身を取り戻すためなの」


ドラコは私であり、全てだから。

そう呟いてレディーは姿をくらませた。泣きじゃくる母親は十数年前に消えた父親と娘を重ねてその場に崩れた。

でも立ち止まれない。目指す場所はハリーの家だ。


‐‐‐‐‐‐‐‐


闇の集団がマルフォイ家に向かっている最中、マルフォイ家の広い家の廊下から啜り泣く声が聞こえた。泣き声はドラコの部屋から聞こえ、ナルシッサは扉を叩いた。


「ドラコ、入るわよ?」


キィと音を立てて部屋に入れば、ベッドで俯せになるドラコの姿があった。ナルシッサは静かにドアを閉めて近くに寄る。この家に帰って来てから毎日こうだ。外の景色を見ては酷く落ち込み、レディーからもらったであろうロケットの写真を見ては涙を流している。



「ドラコ・・・レディーちゃんのことは忘れなさい、レディーちゃんからはドラコの記憶を消したんでしょう?」

「・・・」

「レディーちゃんがドラコを忘れて、あなただけが辛い思いをするなんて」

「・・・」

「私が忘却術であなたの中からレディーちゃんの記憶を抜いてあげるわ」



ナルシッサは黙り続けるドラコに向かって杖を向けたその時、ドラコはベッドから起き上がりナルシッサの杖を手で振り払った。杖は弧を描いて部屋の端まで飛ばされ、壁にぶつかった。


「ド・・・ドラコ?」

「止めて下さい!僕からレディーの記憶を消したら母上でも許さない」

「…いつまであの子のことを思うつもりなの?」


ナルシッサがそう言うと、ドラコは首から下げていたロケットを見つめた。中を開けて写真を見ればウェディング姿のレディーの姿。写真の中で楽しそうに踊るレディーを見てナルシッサに言い放った。



「永久に・・・ー」



‐‐‐‐‐‐‐‐


レディーはその頃ハリーの家に向かって歩いていた。

家からハリーの住むサリー州まで姿くらましをして、最寄りの駅から歩くことにしたのだ。
もう夜になってしまっていて、辺りは真っ暗だ。ハリーの家への地図は、6年生の終わりにハリーから貰っていたので、道に迷うなどの問題はなかった。

速足で歩いていると目的の場所についた。チャイムを鳴らすと出たのはハリーではなく、ルーピン先生だった。


「先生…!」

「あぁレディー!よく来たね、さぁおはいり」


お邪魔しますと言って入って、中にいたハリーやハーマイオニーにハグをした。


「よし!これで全員だな!」

「あれ?貴方は確か、アラスター・ムーディ先生じゃ…4年生で闇の魔術に対する防衛術をしていた」


ムーディを見たレディーは目を点にして指をさした。ハリーは、両手を巧みに動かしてぎこちない説明を初めた。


「あーレディー、いろいろあったんだ。ムーディ先生は今は騎士団の人で・・・」

「ハリー、今は時間がないから後だ。とにかく今は隠れ家に急ごう」


ルーピンはハリーを引き止めて、ポリジュース薬を見せた。ハリーはそうだね、と言うと、髪を一本抜いて薬の中に入れた。


「一人一口飲むんだ!いいな!」


レディーは初めてみるポリジュース薬を1番最初に飲んだ。そして真っ青になって「うぇ〜」と言っていると、どんどん自分の顔が変わってハリーの顔になっていたことを知った。
と言うよりみんながハリーの顔になっていることを知った。ちょっと気味が悪かった。


「さぁ次だ!服を着替えろ!!」


ドサドサと服が出された。ハリーの格好をしているのに、自分の下着をしているなんて、まるでハリーが変態になったみたいじゃないか。
それを見た双子は口を揃えて言った。



「「よく似合ってるよレディー」」

「それ私を褒めてんの?」

「「うん、たぶん」」


ギロリと睨めば双子が萎縮した。まぁいいこの二人のおかげで今はドラコのことを忘れずにいられるのだから。
レディーがため息をつくとフレッドが肩に腕を回しきてきた。と、言っても今はハリーの顔だが…。


「レディーの旅の目的は?」


ハリーの顔のまま言うのはすごく嫌だったから笑ってごまかしたが、双子は私の目的をわかってくれていたようで頑張ろうと背中を押して励ましてくれた。



(優しい双子)


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