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涙を拭いた後、私たちは天文台まできていた。二人がまた離れ離れになっちゃうからと、ドラコとの思い出の場所をオルガが提案したのだ。
今思えばドラコだけとの思い出の場所ではなくなっていた。
オルガに慰められたこともあったし、ランドールと話しをしたこともあった。大好きな人達との思い出の場所になったのだ。天文台に来たときには、もう空は白んでいた。太陽が昇ったら、また戦争の始まりだ。



「オルガの夢って何なんだ?」


不意にランドールが尋ねた。え?と言いながら、オルガは空を見る。私は知っている。オルガらしい夢だ。



「美容師になりたいの。魔法使いの人たちってなんだか身なりに無頓着じゃない?だから、みんなオシャレな魔法使いになってほしい。魔法は使わずに、自分の手だけで仕事をしたい」



いつ聞いても素敵な夢だと思う。オルガはヘアアレンジが上手だし、きっと綺麗な美容院をたてて、たくさんの人を笑顔にさせるんだわ。
レディーがそう思っていると、でもね…とオルガは自分の言葉に否定をした。



「ここ最近で夢が変わったの。ねぇレディーなんだと思う?」

「え…なんだろ」

「みんなと一緒に未来を生きることよ」



オルガがニコリと微笑んで、レディーの頬を掴んだ。レディーは眉を寄せて笑いながら「最高の夢だわ」とオルガを抱きしめる。


きっと叶うわよ。全て終わって、4人で毎日くだらない話に笑おう。そこにはきっとルーファスやカロンもいて、ルーファスはきっと結婚してて子どももいるんだわ。
そうだ。はやくお母様にお父様のことを伝えなきゃ。謝っていたわって…ごめんって。



「…夜明けだ」



ドラコが苦しげな表情で3人を見つめた。ドラコの後ろから、日が昇ってくるのが見える。
レディーはドラコへと抱きついた。彼も同じように体を抱きしめる。



「ランドールから離れるなよ」

「うん」

「必ず戻るから」

「…ねぇ、これを持って行って」

「これは?」



レディーのポケットから、ブレスレットが出てきた。六年の冬休みの日、駅でルーファスが二人にとプレゼントしてくれたものだ。
あの時は彼と別れてしまいずっと渡せないままだったので、寮部屋の宝石箱にずっと入れておいたのだ。その箱も捨てられたかと思っていたが、オルガが隠して持っていてくれたようで今こうして手の上にある。大切な人が自分たちのためにくれたものを、守ってくていたことを本当に感謝した。



「一年前にルーファスがくれてね、ずっと渡したかったの。これを持って行って、お守りだと思って」



レディーがドラコの右手にブレスレットをつけた。夜明けの薄暗い朝に、ブレスレットは美しく光る。
ドラコはありがとうと言い、二人はキスを交わした。オルガはそんな二人の様子を見てまた涙が止まらなくなっていた。神様どうか、また二人をめぐり合わせて下さいと、手を重ねながら。



「待ってる」



ドラコは頷いた。決意の目をし、ランドールへと視線を向ける。



「…頼んだ」

「任せておけ」



ドラコが階段の方へと足を進める。階段を降りたら、ドラコは死喰い人の元へ帰ってしまう。次に会えるのは、いつになるかわからない。私たちは何度この辛い感覚を味わえばいいのだろう。



「でもなランドール」

「なんだ?」

「お前も死んだら許さない」



そう微笑んで、ドラコは天文台からいなくなった。ランドールはわかってるよと言って、彼がいなくなった階段をじっと見つめた。



「俺たちも行こう」



ランドールが振り返る。日はどんどん昇っていたが、雲が厚いせいか暗かった。まるでまだ闇の世界が勝っているかのような、そんな空だった。



---


「ハリーポッターは死んだ。日が昇ったら、ホグワーツへ行く」



ヴォルデモートがハリーの死体を見ながら笑顔を見せ死喰い人に呼びかけた。死喰い人はそんなヴォルデモートの言葉を聞きニヤニヤと笑っている。



「それと、レディー・エジワールというブロンドの髪を持った女子生徒を見かけたら即座に殺せ。瞳の色は翡翠色。我々を裏切った女だ」

「翡翠色…エジワール…」

「ただ見くびらん方がいい。何と言ってもグリンデルバルトの末裔だからな」



ベラトリックスがぼそりとヴォルデモートの言葉を反復させた。ベラトリックスはレディーと一度会ってはいるが、マルフォイの屋敷にいた際にナルシッサからレディーの記憶を取られているため彼女のことは知ってはいない。しかしエジワールという単語がベラトリックスの感情を揺さぶっていたのだ。


そんな中でナルシッサとルシウスが顔を強張らせた。息子の大切な人が最初に命を狙われている。特にレディーをかくまっていたナルシッサの心臓は飛び出してしまいそうなほどに早く動いていた。



「行くぞ」



ヴォルデモートの言葉を合図に足を進める。ホグワーツまでなどすぐだ。血の気の多い死喰い人は杖を早く振りたそうにしている。


「…」

「考え事とは珍しいなベラトリックス」

「我が君…」



森を歩み、ホグワーツへ向かおうとする死喰い人の中で、いつも好戦的なベラトリックスは一人黙り込んだまま歩んでいた。
斜め後ろをルシウスとナルシッサが歩んでいる。息子のドラコが無事か心配そうに、遠くのホグワーツを見つめながら、そんなヴォルデモートとナルシッサの会話を黙って聞いていた。



「エジワールという女、私に殺させて頂けないでしょうか?」

「ほぉ、興味があるのか?」

「えぇ、我が君を裏切った者は誰であろうと、許せませんわ」

「良かろう。お前と向かいうつまでに死んでいなければだがな」



ヴォルデモートはまた微笑んだ。ナギニを撫でながら。もう彼はレディーなど興味も、眼中にもないのだ。死ねばそれでいい。それだけだった。



「ありがとうございます…」



エジワール…サリアの姓に、翡翠色の瞳でブロンドの髪…間違いない二人の子ども。今更その子どもが生きていようとどうでもよかったが、我が君を裏切った奴は皆殺しだ。



「楽しみねレディー・エジワールちゃん」



ベラトリックスは高らかに笑った。彼女のヒステリックな笑い声が森に響く。ナルシッサはただそんなベラトリックスの姿を見て歯をくいしばることしか出来なかった。



(我が君をよくも裏切ったな小娘。ロデオお前の血は私が途絶えさせる)



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